「こ、れだ。あった」
ユイは1冊の本を手に取った。しかしそれは本ではなかった。本の形をしたレプリカだった。その表紙に印はあった。
ユイはその印を床のものと重ね合わせた。その瞬間、ポッカリ穴が開いたように床がなくなった。ユイはその穴を覗き込んだ。そこには地下に続く階段があった。
ユイは何とも言えない威圧感を地下から感じたが、好奇心の方が勝り、階段を降りていった。
階段を降りると長い通路が続いていて、その奥には扉が小さく見えた。
ユイは扉に向かって歩いていった。扉の前まできてユイは止まった。扉には鍵がかかっていたのだ。鍵がなければ扉の向こうには行けない。ユイは途方に暮れた。ふと扉に手を触れる。それと同時に淡い光が辺りを照らし、扉の鍵が外れた。
「何で…」
ユイは一瞬戸惑ったが、意を決して扉を開けて入っていった。入ってすぐに目に入ったのは、大きな培養液が入った円柱の水槽だった。そこに誰かが入っている。
それが誰なのか知るためにユイは水槽に近づいていった。水槽に入っていたのは、ライだった。
「どうしてライが…」
ユイが水槽に手を触れようとした時、誰かが声をかけてきた。
「…そこにいるのはユイか?」
その声はヤキマのものだった。ユイはまた映像だと思っていた。何故ならヤキマはもういないのだから。だからまた映像に残したものが出てきたのだと思った。
「ユイか?ユイなのか?」
ヤキマはユイに近付いてきた。そしてユイを抱きしめた。そこでユイはこのヤキマが実体であると気付く。
「パ…パ?本当にパパなの?」
「そうだ。パパだょ、ユイ。会いたかった…」
ユイは戸惑った。ヤキマは死んだのだと聞かされていた。じゃあここにいるヤキマは誰なのか。しかしどう見てもヤキマ本人だった。
「…パパは死んだって聞いた。なのに何で?」
ユイは目の前にいるヤキマに向かって言った。まだユイは本物のヤキマだとは信じられなかった。