『…なぁ。どうして実験体はモノ扱いされなきゃいけないんだ。実験体だって生きているのに…』
ライが夢に出てきて言う。アラン達研究員は自分のことをモノ扱いする。実験体だからって感情がないわけではない。実験体にも造られたモノにも感情はある。それなのに彼らはただの実験道具のように扱うと。
『ユイ。お前も…お前もオレをそんな風に思ってる?オレのこと消そうとしているんだろ。オレを、オレを消さないで…』
ライはそう言って消えてしまった。
「ラ…イ。ちが…う。そんなこと思ってな…。ま…って!」
ユイは自分自身の声によって目を覚ました。
夢見…悪い。何でライあんなこと…。
ユイは夢のことを考えていた。何故ライがあんなことを言ったのか。どうして今あんなことを言うのか。
あぁ。そうか。もうすぐ約束の日だ。だから…。
ユイが目覚めてから3年が経とうとしていた。もうすぐ16歳になる。選択を迫られる時期に入っていた。薬を投与するか、このまライと共に生きていくか。
どうしよう。ライと生きたいけどずっとこの研究所にいるのは嫌だ。私は自由に生きたい…!
ユイは椅子に腰掛けた。ヤキマはよくここに座って考え事をしていた。ユイには絶対この椅子には座らせてはくれなかった。それによくいつの間にか部屋からいなくなっていたり、いつの間にか部屋に戻っていたりした。
パパはどこに行っていたんだろう。
ここにはあの扉以外、窓しか出口はない。それなのに気付けばいつの間にかいなくなっていた。
ユイはふと机の下を見た。よく見ると、床が少し周りのものとは違っていた。中央には印があった。以前にどこかで見たことのある印だった。
これ、どこで見たっけ?確か見たはず。パパの部屋で…。何かの本だったかしら。
ユイは部屋の全ての本を探し始めた。床の印と同じ物を探すために。その床に何かを感じた。何かがあると、とても大切なものが。その何かを知るために。