怖いんだけど…
これじゃあ総長様じゃなくてただの変質者。
なんて言葉は絶対に言わないけど。
「美希」
今まで独り言を呟いていたのが嘘のように切り替わる。
私は蓮の方に視線を向けただじっと次の言葉を待つ。
「希龍の姫、なってくれねぇか?」
「敵だよ?いいの?」
"裏切るかもよ"その意味を込めて聞く。
ここまで言い切らなくても伝わるはずだからね。
「大丈夫だ。お前はそんな事しねぇよ」
周りを見れば笑顔のみんな。
偽りなんか無くて本気で向き合おうとしてくれているのが嫌なくらいに伝わってくる。
全く…どこにそんな根拠があるんだが…
呆れながらも認めてくれたことが、受け入れてくれたことがどうしようもなく嬉しかった。
「ほんと…バカな人たちっ」
なんて貶しながらも笑顔な私。
自分でも思う。矛盾してるな、ってね。
これ以上大切なものなんて増やしたくなかった。
だから必要最低限関わらないようにしようと思っていたのに。
でも、負けてしまった。
この人たちの真っ直ぐな思いに。
進んでみよう。
心に誓う。
私が守ってみせるよ。
もう二度と失わせたりしない、と。