か、顔が近い……っ!!


目の前には整いすぎている綺麗な顔のドアップ。


だんだんと心拍数が上がる。


心臓はもはや破裂寸前だ。



「黒髪…か」



そう呟く言葉も全然頭に入ってこない。



「まさか俺らの名前覚えてねぇーの?」



きっと真っ赤であろう私とは裏腹にどこまでも余裕な表情でニヤリと口角を上げる黒髪。



「覚えない、です」



言い訳を考えられるはずもなく素直に答える。



「蓮」



ポツリ呟かれた名前。



「え、と」



いつまでも大きく鳴り響く心臓の音のせいでうまく言葉も出ず途切れの悪い言葉が出る。



「蓮って呼べ」



何としてでも開放されたい私は言われた通り「蓮」と呟く。



どうやらそれで満足したらしい蓮は速やかに私を解放する。