数十分のバイク移動を終え、目の前にはつい最近見たばかりの倉庫。


バイクから降りたものの一向に中に入ろうとしない黒髪。


こないだは私が入るまで待ってたのに。


今日は何故だか黒髪の行動がおかしい。


あっ、もしかして……



「ねぇ、体調悪いの?」



いつまでも動かない黒髪に近付き彼のおでこに触れる。


私のひんやりした手にジワジワと体温が伝わってくる。



「熱は…無いのかな…」



触れたはいいものの手で体温を測れるはずもなく一人ブツブツとつぶやく結果に。


すると私のすぐ側を素早くある物が通過した。


その正体は考える間もなく私の肩にかかる。


目の前の黒髪がTシャツになったのを見て彼のパーカーだと理解した。



「え、えと、寒くないの…?体調悪いんでしょ?」



理解はできてもいきなりの行動についていけない。


第一、体調悪い人がTシャツなんてダメに決まってる。


余計に悪化するだけだ。


一人オロオロする私をフッと鼻で笑ったかと思えば「元気だから気にすんな」なんて言い出す始末。


やっと話し出したかと思えばすぐに歩き出し入口へと向かう。



「あっ!パーカー!」



と、叫ぶ私の言葉は「行くぞ」と軽くスルーされ結局ワンピースが見事に隠れるほどブカブカなパーカーを着たまま入る事になってしまった。