「あ、あぁ。悪い。行くぞ」
やっと我に返ったらしい黒髪は返事をしてからすぐに私に背を向けバイクに乗ってしまった。
……変な人。
不審な行動に警戒しながらも私も続けてバイクに乗る。
行先は聞かなくても予想がついた。
恐らく希龍の倉庫、だ。
"諦めない"という言葉が嘘じゃないという事に嬉しさを感じる。
これから私が何者なのか、その正体を話す事になるというのに不思議と不安は感じなかった。
黒髪の腰に手を回すと走り出すバイク。
まだ少し冷たい風とは裏腹に心はポカポカ暖かい。
バイクの風に夢中だった私は気が付かなかった。
黒髪の頬がほんのり赤く染まっていたことに。