「あっ、そういえばね。私ここでは古城麗なんだって。間違えないでね?」
ふと自分は男だった事を思い出し朝言われたことを伝える。
「分かりました。麗さんですね」
ふわっとした優しい笑顔で答える翔ちゃん。
「翔ちゃん敬語やめたほうがいいんじゃ…」
「まっ、別にいいんじゃないか?それよりえっと…麗!暇な時はいつでもここ来ていいからな〜」
伝えた直後に言葉に詰まる鉄ちゃんを見て本当に大丈夫かなと不安になった。
でもきっとそれを言うとまた拗ねちゃう気がしたから「ありがとう」とだけ言っておいた。
「今度こそ行きましょうか」
「うん。じゃあね鉄ちゃん!」
笑顔で手を振る鉄ちゃんに見送られながら私たちは扉を開け、教室に向かい始める。
閉まりきった扉の向こうで「美希…」と小さく呟かれた言葉は誰にも届く事なく消えていった。