「桜が咲いたよ。」



5歳の春、初めて満開の桜を見た

「ほんとだ、写真で見るのよりもすっごいね」

「ふーか、桜みるの初めて?」

「とうきょーにいた頃はずっと病院だったからね
昔少しだけ見た桜はあんまり咲いてなかった」

首が痛くなるくらいに上を見上げた

「そっか..
でもこれからは毎年見れるね!」

「毎年?
あたしとハルキがおばーちゃんおじーちゃんになっても?」

「うん!毎年!ずっと!」

ずっと、の意味なんてよくわかったいなかった

「約束だよ!」

「うん!」

小さく絡み合ったふたつの小指は、
できもしない約束をできるとでも確信しているかのように
固く強く結ばれていた