「要ー?」
「っ!…稚、早」
「どうしたの。ずっとそこばかり水をやってて」
「…稚早。これ、向日葵、だよな?」
「―え?どこに、向日葵があるの?」
耳を、疑った。
「何処って、そこ…!雑草の生えてない所っ…」
「雑草なんて、何処にも生えてないよ。そもそも、此処はパンジーが植えてあるだけだよ?」
――まさか!
そんなこと、あるはずないと
俺は再び向日葵に目を向けた。
――そこには、何もなかった
消えていたのだ。
歪んでいたような
異質な花は、空間は
どこにもない
――まるで、悪夢が去ったかのように
「ここに向日葵なんてなかったじゃないか…って要、どうしたの?」
「え、いや…何でも、ない」
――背筋が凍るほど心が騒ついた
何なんだ、今のは。
「ああ、でも向日葵って言うと昔、向日葵を折った人が事故にあったらしいんだけど、どうやら内蔵いっぱいに向日葵が入っていて死因が実は窒息死だった…っていう都市伝説があるらしいよ」
――楽しそうに話す稚早を余所に
この消えない不安感を
俺はどうすることもできなかった