なぜか彼女の笑顔を見て、胸を撫で下ろしていた。

 なぜか分からない。でも、そう感じていたのだ。

 そのとき、強い風が吹く。

 彼女の頭上に白い桜の花びらが舞い降りるのが見えた。

 しかし、彼女は自分の作った弁当を食べていて、そんなことに気づいた様子もない。

 なんとなく、そんな彼女を見て、少しだけ笑っていた。

 その笑いが今までと違うことはなんとなく分かっていた。

 教室に戻ると、一気にざわめきが消えた。

 いつもはそこまでない。僕の噂でもしていたのだろう。

 僕が席につくと、童顔の男が傍らに立つ。

 彼の名前は奈良秀一。名前どおり成績はかなりいい。

 昨年から同じクラスになって、やけに話しかけてくる。

「茉莉先輩とつきあっているって本当?」

 またその話か。


 どうせそういうことになっているなら黙っていても無駄だろう。

「本当だよ」

 教室内でざわめきが起こる。