それが弁当がこっちのほうが大きかった理由なのか。

「箸、貸して」

 彼女は握っていた箸を僕に渡す。

「こんなに食べられないだろう?」

 彼女はこくんとうなづいた。

 僕はとりあえず、二個入っているおにぎりを自分の弁当箱に移す。

「無理に食べなくていいよ。形もおかしいし」

 彼女は挙動不審になっていた。

 自信を持っているように見えた彼女が、ここまで変わるのがおもしろい。

 人は第一印象では分からないのだと改めて思う。

「普通の米をまずいおにぎりにするほうが難しいって」

 僕は彼女に弁当を返すと、それを食べた。

「おいしい?」

 不安そうに僕の顔を覗き込む。

「まずく作るほうが難しいって言っただろう?」

「おいしくなかった?」

 この女は。普通考えたら分かりそうなものだが。

 しかし、そんな泣きそうな顔をされて、いえるほど鬼でもない。

 味がとりわけおかしいわけでもなかった。

「おいしいって言ったんだよ」