「素敵な香りだと思うけど、匂いがきついから人によってはそう感じるのかもね」

 彼女はそこで一息つく。

 そして、話を続けた。

「白くて透明感のある花だからかな。花言葉は清浄無垢っていうんだって」

「清浄無垢か」

 なんとなくその言葉と彼女の姿がぴったりだった。

 いつもみたいに皮肉る気持ちもなく、言葉が喉から滑り降りてくる。

「先輩みたいだね」

 そのとき彼女の顔が真っ赤になるのが分かった。

 あの旅行の日のような姿だった。

 けれど、そのすぐ後に彼女が悲しそうに微笑むのを見てしまった。

 僕の心にやきつくような悲しげな表情をしていたのだ。