「おはよう」

 能天気な明るい声が響く。

 今日も彼女は待ち合わせ場所に立っていた。

 酒の匂いも、化粧の匂いも、整髪料のような匂いも、タバコの匂いもしない。

 髪の毛も地毛のままだった。

 けれど、わずかに甘い香りが漂っていた。

 彼女を見てほっとする。

 その理由は母親を見たからだろう。

 あれから毎日彼女と学校に通っている。

 彼女は僕よりも遅く来ることはまずない。

「おはよう」