「好きです」
「…ごめん彼女いるから」
そう言って、
彼は行ってしまった。
1人残された私は
どうしたらいいものか分からず
ポツンと立っていた
そして、しばらくして
あぁ、そうか
私は一つの結論に結びついた。
“失恋”
私は失恋したんだ。
そう気付いた瞬間目から涙がこぼれ落ちた。
私は今日失恋しました_____
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遡る事一ヶ月_____
私、大塚 舞(おおつか まい)は今日からこの桜木高校に通うことになった。
教室へ入って最初に目に入ったのは窓に映り、風に揺らめく桜の木。
ふいに、中学の時を思い出した。
「舞、あの事は大丈夫?」
入学式が終わったあとに佳織が心配そうに聞いてきた。
「佳織…ありがとう、でも私は強くなるんだ」
幼馴染の早川 佳織(ハヤカワ カオリ)。長いロングヘアーを後ろで一つにまとめている。
ほのかに香る甘い香りが鼻先をくすぐらせる。この感じ、落ち着く。
そして、その隣にいるのが同じく幼馴染の大渕 彼方(オオブチ カナタ)。
私とあまり変わらなかった身長は、ぐんぐんと伸び、今ではかなり見上げる形になっている。
「舞、あんま無理すんなよ」
「うん…でも…大丈夫。2人がいるから」
あの事、というのは
私が中学3年の時
父はその時タクシードライバーを仕事としていた。
しかし、ある日
父の運転していたタクシーがスリップして、ガードレールを突き破る大事故を起こしてしまい、
父は無事だったのだけれど
乗客の男の人が亡くなってしまった。
それからというものの、
父は多額の借金を抱え、
そして、家から出ていってしまった。
母は父が出て行ってしまった為、借金を払うべく一日中仕事に打ち込んでいる。
だから、私は高校は入らずなんでもいいからバイトを見つけて働くと母に言ったのだけれど、
母は、怒ったように、
「何言ってんのよ。あんたは高校行きなさい。それ位お母さんがなんとかするから、舞は何も心配しないで。」
と言ってくれて無事にこの高校に行ける事になった。
しかし、私はショックの発作のせいか過呼吸になってしまうことが多かった。
その時は何もかもが嫌になって、幸せなど感じなくなってしまった。
街で幸せそうな家族を見るたびに、なぜか怒りが湧き出たりもした。
そんな自分にも嫌気がさして、本気で何度も死んだ方が楽なのではないかとも思った。
そんな私をいつも励ましてくれたのが幼馴染の2人だったんだ。
そして、今、
発作は治まりつつあり、普通の生活をおくれるようにもなってきた。
「私は大丈夫、さ、帰ろっか!」
くよくよしていたって仕方がない。
それに、お母さんも私のためにがんばってくれているのに、私だけ落ち込んでいられない。
そう思い私が言うと、
「何かあったら言ってね」
「ああ、すぐ飛んで行くからな」
佳織と彼方がそう言ってくれる。
本当に佳織と彼方がいて良かったと思う。
________そして、その日は
2人と別れて直ぐに家に帰った。
「ただいまー」
「おかえり、舞、悪いんだけど買い物行ってくれる?」
「分かった」
お母さんにはあまり負担かけたくないから、買い物はいつも私の仕事。
だけど、その日はなぜか少し憂鬱だった。
さっき昔の事を少し思い出してしまったからかな…
そして、
買い物が終わり帰ろうとした時、
「ハァ、ハァ…」
やばい、まただ…
過呼吸。
過呼吸には慣れてしまった。
息をしたいのに、体はそれに反して言うことを聞いてくれない。
もどかしい…
私はその場にしゃがみ、紙袋で口を押さえ、呼吸を整えていた。
最近は来なかったのに…
「大丈夫か?」
すると、同い年くらいの男の人が声をかけてきた。
私は息が途切れそうになりながらもその人に答えた。
「ただの…過呼吸…」
「救急車呼ぶか?」
「ハァ、ハァ…大丈夫…」
その男の人は私が落ち着くまで、そばにいてくれた。
「すみません、ありがとうございます…」