それを聞いた途端に、涙が溢れでてきた。
私はただ自分が正しいことをしてるって思いたかっただけなんだ。
自分はお父さんとは違う。
何もしてない、許されたいってことを間接的に表現した偽善者だったんだ。
自分を守りたかっただけなんだ。
そう思うと涙が止まらなかった。
「っごめんね、佳織…ありがとう…っ、私、浩哉のこと好きになっていいのかな?」
「ごめん、私も舞が悪いみたいにいっちゃったね。逆なの。
舞は何もしてないでしょ?なのにそのことに縛り付けられるのはおかしいよ。
ちょっと言い方キツイけど舞が思い詰めることで救われる人はいないんだよ。だから舞は自分の気持ちに素直になって。」
ありがとう。佳織。
佳織がいなかったら私はいつまでも自分を追い詰めてた。
変な使命感で感情を持ってはダメなんておもって。
でも違うんだね。
私がすることはそんなことじゃない。
そんなことで償えると思ってた私はバカなのかもしれない。
「佳織…本当にありがとうっ……私っ…浩哉が好き。」
私の本当の気持ち。
今まで隠してた本心。
心の中でしか言えなかったのに声に出したらすごくスッキリして、改めて浩哉が好きなんだと確信できた。
「そうと決まったら、作戦考えないとね!」
佳織が楽しそうに言う。
「さ、作戦!?」
「そう。浩哉が舞に恋する作戦。」
恥ずかしくて「や、やめてよ〜」なんて言う私を無視してまずは何しようかな。なんて考えてる佳織。
佳織みたいな親友を持ててほんとによかった。
恥ずかしがりながらも心の中ではそう思う。
浩哉が好き。
その気持ちを胸に秘めながら。
______私は知らなかったんだ。この気持ちが後に皆を苦しめるって事を。_________
-Hiroya-side
「浩哉ー、今日どっかよってかね?」
帰り際にすっかり仲良くなり、俺に懐いている彼方に誘われた。
「いいけど…」
「ん?いいけど、なんだ?」
言っていいのか…?
まぁ、面倒いしそれに、みんなもう知ってると思うし言っていいよな。
「お前の大好きな佳織ちゃんとかいいのかよ。」
それを言った途端、彼方の顔は真っ赤に染まった。
「な、ななななななんで浩哉が知ってんだよ!」
今、"な"って何回言った?
わかりやすすぎ。
それでバレてないと本気で思ってるのか?
「あんなバレバレなのに、知らない方がどうかしてると思わねぇのか?」
「は、はあ?ち、ちげーし!…いっでぇ!」
「動揺しすぎ、それに舌噛んでるし」
「分かったよ…そうだよ。
俺は佳織が好きなんだ。
誰にも言うなよ?
今日は佳織、舞と2人で帰るんだってよ。」
頰を赤らめながらそんなことを言う彼方。
お前は乙女か!
と言いたい衝動を心の中で止めておく。
「……分かった。で、どこ行くんだ?」
「ちょっと…な。」
彼方は少し口元を上げて言った。
この時の彼方の怪しい笑みの理由を俺はまだ気付いていなかった______
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「…おい、これはどういうことだ?」
彼方に尋ねた。
「どういうって、動物園だけど」
「それは見たら分かる、俺が聞いてんのはなんで男2人で動物園なんだよ」
男2人で動物園とか、あり得ないだろ…
小学生でもいかねぇわ!
彼方は何考えてんだ?
「なんでって…そりゃあ、デートだろ!」
はあ?
「死ね。」
そう呟いて俺はきた道を帰ろうとした。
ほんっと彼方が何考えてるかわかんねぇ。
「は、ちょっとまてよ!」
こいつの考えには着いていけねぇ。
俺は、俺の名前を呼んでいる彼方を無視して本気で帰ろうとした。
そして、声が止みやっと諦めたと思ったら、
「浩哉!この通り、すまなかった!許してくれ!」
と目の前で土下座をしてきた。
マジかよ…子供も見てるし……
人前で土下座とかよくできるな。
「あー、分かったよ。帰らねぇから…てか、本当になんでここに俺を連れてきた?」
「ちょっと、お前と話したい事があってな…」
話したい事…?
それも気になったがまだ分からないことがある。
「じゃあなんで動物園なんだよ」
「え?なんとなく?」
と言って、彼方はてへっと言ってから舌を出した。
うっ……
きもい……
なんとなく、か。まぁ彼方らしいと言われればそうだが。
「まぁ、それはいいとしてまずは動物を見ようぜ!」
「はあ?良くねぇから」
そう言った俺を無視して、半分無理矢理、中に連れていかれた。
本当、なんなんだよ……
そして、あれこれ見て日が沈みかけてきた頃。
2人で近くの海辺の道を歩いていた。
そう、男2人で___________
俺があからさまに嫌そうな顔をしていると、
「なぁー浩哉」
と彼方が言った。
「なんだよ…」
「恋ってなんだと思う?」
突然真面目な顔でそんなことを聞いてきた。
わけのわからない俺は、
「はあ?なんだよ急に…」
といって彼方から目をそらす。
「恋って、なんだと思うって聞いているんだ。」
もう一度、同じように真剣に聞いてきた。
「わかんねぇよ。急に聞かれても」
そう言うと、彼方はため息をついて、