彼女作らないんだ……
……ハッ‼︎
私なんか落ち込んでる?
いや、まさか…
風邪引いたかな?
そういえば今日は風強いし…きっとそうだよね…
よし、せっかくみんなでカラオケに来たんだし変な事考えないで歌おう!
それにしても、彼方も単純なんだから…
まあ、それが彼方の良いところなんだけどね。
そして、4人で楽しく歌っていると、
プロロロ……
浩哉の携帯が鳴った。
「あぁ…分かった……」
誰だろう…
私がそう思っていると浩哉は、
「ごめん、俺帰るわ」
と言って帰ろうとした。
「は?まだいいだろ?」
浩哉とすっかり仲良くなった彼方が言ったけれど、
「悪い、用事ができたんだよ…じゃあな」
と言って浩哉は帰ってしまった。
どうしたんだろう…
もしかして、さっきは作らないって言ってたけど彼女がいて今から会いに行く、とか…
ズキッ……
あれ?なんか今胸が痛いような…
本当に今日はどうしたんだろう…
それに、正直浩哉が帰ってしまって少しがっかりした。
「舞、大丈夫?なんか元気なくない?」
「昨日の今日だし、無理するなよ。」
私を見て佳織と彼方は、昨日のことを心配してくれたのかしきりに声をかけてくれた。
でも、その声を聞いても私はなぜか上の空だった。
私は「ごめんね、大丈夫だよ」とだけ返事をして、それを見た2人は腑に落ちないような顔をしながらもそのままカラオケに戻った。
______私がこの胸の痛みの正体に気付くのは、
もう少し先の話になる。______
-Hiroya-side
櫻井 浩哉。
それが俺の名前。
俺は今年から桜木高校に通うことになっている。
今日は入学式も終わり晩飯を買いに俺はコンビニで寄り道をしていた。
そして、買い終わった時外で1人の女の子が苦しそうにうずくまっていた。
あまりにも苦しそうだったので、俺は思わず声をかけてしまった。
「大丈夫か?」
そしたら、彼女は苦しそうな顔で、
「ただの…過呼吸…」
と言った。
過呼吸……ってやばくないか?
「救急車呼ぶか?」
俺がそう言っても彼女は、
「ハァ、ハァ…大丈夫」
と言うばかりだった。
俺はどう対応していいか分からず、ただ落ち着くまでその子のそばにいた。
そして、しばらく経ち、
「ありがとうございます…」
と彼女が言った。
あれ?なんか見たことあるかも…
セミロングで少しくせの入った髪を下ろしていて、
身長は、女子だと高い方だと思う。
そして透き通るような白い肌。
美人というよりは、可愛いという言葉が似合う。
誰だっけ…
「もう、大丈夫なのか?」
俺が聞くと、
「はい…慣れてるんで」
と答えた。慣れてるって…こんな辛い事耐えられるのか?
小さな体を少し震わせながら一生懸命に息をする彼女を見て
「大変だな…」
なぜか自然と言葉が出た。
「本当にすみません…」
彼女がそれを言った時、ふと思い出した。
同じクラスの子だ。
窓側の席で、ずっと外の桜を眺めていた女の子。
確か名前は…大塚 …なんだっけ?
すぐに覚えてしまった。
大塚………
それは、俺の親父が死んだ原因を作った人と同じ名前だったから……
でもな…まさかな……
大塚なんてどこにでもいるしな。
偏見はだめだと思いつつも大塚という苗字に過剰に反応してしまう。
そんな自分が醜くて嫌いだ。
でも、それを抜きにしても俺が彼女に見惚れていたのは確かだ。
桜を見つめる表情は横顔からでも分かるようにどこか悲しげで、そんな彼女を見て今の自分と重ねてしまっていたのかもしれない。
______それがキミとの出会いだった。