甘々な彼とスイートピーを。





恋をすることをやめる。




そうか…俺は、





俺は、舞に恋することをやめようとしたんだ。




「前を向け。自分の気持ちに正直になれ。簡単に諦めるなよ。」




弓弦が声を張り上げてそう言った。




弓弦は、どちらかというと静かでいつも皆からクール王子なんて呼ばれてる。




その弓弦がこんなに声を張り上げたところを見たのは初めてで、




言葉が心にすっと入ってくる。




俺は、逃げてる。




恋をすることから、それに舞から。




「弓弦、ありがとな。」










俺は、もう逃げねぇ。




「ほんと、浩哉はバカだな…」




「何か言ったか?」




「なんでもない。……次、あいつを泣かしたら俺が奪うから。」




「泣かせるかよ。」




弓弦ありがとう。



舞を泣かせたりなんかしない。




俺は前を向いて生きる。







-Mai-side





あ、れ…?



また、これ…



皆、泣いてる。



どうして…?聞きたいけど聞けない。




まるで、誰かが死んだときのように…




でも、なんで皆私の方を見て泣いてるの?




嫌な予感がする…





「………い、……まい、…舞!!」





「………ん」




あれ、お母さん……?




「もう!いつまで、寝てるのよー」




夢だったんだ…




そう思い、起き上がろうとしたとき





グラッ……




「…舞?……舞!!」




私は意識を手放した_________











随分寝たような気がする……




ここはどこ…?




真っ暗で何も見えない。




怖い…




わたしはなにをしているの?




そう聞いても誰も答えてくれない。




"まい"




え…?




"まい、帰ってくるんだ"




誰、誰なの?




"帰ってくるんだ…"





「……舞!」









私は目を開けた。




さっきのは何……?




「ああ!舞、起きたのね!」



「舞!大丈夫か?」



「おか、さん…おとう、さん」




「ええ、そうよお母さんとお父さんよ。心配したんだから、急に倒れて」




急に倒れた…?




わたしが?




「ここは…?」




「病院よ。今、先生が来るから。」




そして、しばらくして先生が来た。




「具合はどうだい?」




「……頭が少し痛みます…」




「自分の名前言ってごらん?」





「大塚…舞です。」




「ありがとう。それじゃ、取り敢えずお父さんとお母さんと話をしますね。」




そう言って、皆出て行ってしまった。




深刻そうな顔してた…




私、そんなに悪いのかな?









そういえば、寝ている間、何か夢を見ていた気がする……




思い出せないな…




なんだったのだろう…




……それにしてもお母さんとお父さん遅いな。





そして、少し経った頃にお父さんとお母さんが病室に入ってきた。




あれ、お母さん目、腫れてる?




お父さんもなんでそんなに悲しそうなの?





「ど、どうしたの……?」








私がそう言うと、お母さんは泣き崩れた。




「なんで…なんで……」




そう繰り返している。




それを見たお父さんは一つ溜息をついて、話し始めた。




「舞…落ち着いて聞いてくれ。」




「ど、どうしたの?改まって…私、そんなに悪いの…?」





「……舞の脳に腫瘍が見つかった。」










え、何言ってるの?




「冗談やめて、よ…」




私は、驚きを隠せずにいた。



そう、これはなんかのサプライズ。




「舞…信じられない気持ちは分かる。お父さん達も最初は嘘だと信じたかった。だけど、これは紛れもない事実なんだ。」



"紛れもない事実"




その言葉が私の心を壊そうとする。




お母さんは、嗚咽を漏らして泣いている。



「でも、でも…治るんだよね?」







「うっ…うあぁ…」




お母さんの嗚咽が大きくなった。




「…………」




お父さんは、何も答えてくれない。




「は、はは、ち、ちょっと〜やめてよ。お母さんもお父さんもなんか変だよ?」





私は怖くなってわざと強がった。




そうでもしないと泣き出してしまいそうで、泣いたらもう後には戻れない気がしたから。





「…………」





それでも何も言ってくれない。




「ねぇ、本当のこと言ってよ!私は治らないの?何も言ってくれないならわからないじゃない!」




私は、怒りと恐怖心からつい大きな声を出してしまった。




そして、次にお父さんの口から出た言葉で私はどん底に突き落とされた。