甘々な彼とスイートピーを。





「辛い思い……本当にそれだけか?」





…もちろん、辛い思いだけ。


それだけ…





そう思っていると、頭の中に浩哉との今日までの事が思い浮かんだ。




過呼吸の時、声をかけてくれたこと。

カラオケに皆で行ったこと。

毎日毎日、とびっきりの笑顔を見せてくれたこと。






かけがえのない毎日だった。

そして浩哉に恋して、

毎日がとても楽しくて。




「幸せ…だった……」












気付いたらそう呟いていた。



浩哉に出会えなかったらこんなに毎日楽しくなかった。



たとえ過去に何があったとしても、



出会ったことを無しにはしたくない。




そう思ったんだ。





「舞は何も悪くない。堂々と胸張ってろ。浩哉だって分かってる。」






"堂々と胸張ってろ"




その言葉が心に響いた。









「私…まだ浩哉の事好きでいていいのかな…?」


そう言うと



「いいんだよ、舞!」








すぐに佳織が言ってくれた。

そして彼方もすかさず



「過去に今を持っていかれんな。」




と言ってくれる。




ありがとう。2人とも。








2人の言葉のおかげで勇気が出たよ。





もう少しだけ好きでいさせて下さい。





そう心の中で思った。





_________







_________________
___________
______




ピリリリピリリリ…



目覚まし時計

うるさいな……

いいや、もう少しだけ…




ピリリリピリリリ…




「あーもう!」



バシッと目覚まし時計を止めた。



やばい、頭が重い。



昨日相当泣いたからかな。



今日は学校行きたくないな…



そう思いながらも制服に着替えてリビングへと階段を降りて行った。



「おはよう。」



お母さんのいつもの声。



でも今日はそれに加えて




「舞、おはよう。」










懐かしいお父さんの声。




「お父さんお母さん、おはよう。」




テレビに流れるアナウンサーの声。



お母さんが楽しく朝食を作る音。



お父さんが読んでいる新聞の擦れる音。



全てが新鮮に感じられる。



久しぶりに"家族"って感じ。




「舞、どうした。ニヤニヤして。」



「いや、家族っていいなって。」




私がそう言うとお父さんとお母さんが顔を見合わせて微笑んだ。




1度はバラバラになってしまったけれど、これからはずっと笑いあっていたい。




素直にそう思ったんだ。










朝食も食べ終わり学校へ向かう。



やっぱり今日はなんかだるい。



フラフラする。



そして、前から来た自転車から避けようとして重心を変えた瞬間。



ぐらっ…



急に視界が暗くなり、



私はそのまま意識を手放した。








_______________
__________
_____





皆、泣いてる。



両親も先生も、そして友達も。



皆私の方を見て泣いている。



どうして泣いているのか聞きたくて、でもなぜか聞けなくて。



聞いてはいけない気がして…



私はここにいるよって言いたいのに言えない。



もどかしい…








「……ま……い……」




遠くから私の名前を呼ぶ声が聞こえた。




その声はどんどん大きくなっていく。




「まい……まい、舞!」




目を開けた。



そこには白い天井が広がっていた。



保健室だ…



夢だったのかな……



そう思っていると隣から声をかけられた。



「舞、気がついた?」



「か、おり…」



「道路で倒れてたんだからね」




やっぱり私はあのまま倒れたのか。



でも、ここまでどうやって…?




「ここまで海城くんが運んでくれたんだよ。」




私が何を言いたいか分かったのか、佳織がそう教えてくれた。




弓弦がここまで…?








そう思っていると、





「うっ…」




私はまた頭が重くなるのを感じた。




「大丈夫??とりあえず病院行った方がいいよ?」




「うん…ありがとう」




「じゃ、バック取りに行くから」




そう言って佳織は保健室を出た。




私は起き上がってみると、案の定まだフラフラする。




本当にどうしたんだろう。




病院行こう…