「あたし足遅いし」
「借り物競争だから足の速さはそんなに関係ないって。ね、お願い!」
確かにそんなに関係ないのかもしれないけど、出来れば目立たない競技に出たい。
でも梨花が借り物競争に行ってる間暇になるのも嫌だな、なんて思って。梨花に向かってコクンと頷いた。
「やった!じゃあ決まりね!」
黒板にあたしと梨花の名前を書いて、満足気にニコニコ笑う。梨花もシロと同じで行事とか好きなタイプだ。
だからきっと借り物競争以外にも、リレーとか。出ちゃうんだろうなぁ。
「借り物競争に出るの?」
「え?」
横から声がしたかと思えば、隣に先生が立ってて。ふにゃんと笑いかけてくる。
教室内でこんな風に先生から話しかけてくることは少ないから、ものすごく緊張してしまう。
「…はい。先生はフォークダンスだけしか出ないんですか?」
いつもと違う言葉遣いがおかしかったのか、先生は笑いを堪えるように俯いて口元を手で覆ってる。
だって、こんなとこで仲良さそうに話すわけにはいかないでしょ?
「んふふ。俺ね、リレーにも出んの。部活対抗リレーってあるじゃん、あれ先生チームもあるらしくて。」
「その先生チームに?」
「うん、若いからって。」