決して目立つ顔立ちではないし、美人というんけじゃない。けれど、

「お粗末様でした」

常に上がっている口元、柔らかい笑みがいつの間にか周りを惹きつけている。

「俺、こういう気遣い出来る子好きよ」

反応を見るつもりで言った言葉に、彼女は目をぱちくりとして首を傾げる。少し間があってから、お茶の事と気付いたらしい。

「そうですか、それなら良かった」

口説かれてると思ってないのか、受け流されたのか屈託の無い笑みで返されてしまう。

「そんな事出来る子、いくらでも転がってますよ」
「北川も転がってんの?」
「私は……」

言葉が消え、一瞬彼女の表情に戸惑いが含まれた気がする。けれど次の瞬間にはもうまた笑顔が戻っていた。

「私は、吊るしあげられてます、かね?」
「聞くなよ」

何だそれは。何なんだよその例えは。ふふふと笑う彼女に、俺はやってしまったと内心頭を抱えた。

そんな事、なんて簡単に言ってくれるな。茶入だけじゃなくて細かい気遣いの事を俺は言ってるんだ。きっと彼女はそれが出来る側の人間なんだ。

吊るしあげられてる君に、この手は届くのだろうか。