傘を持った坂城君は濡れてて、そんな状態であたしに傘をさしてくれてる。


…まさか坂城君に、こんな一面があったなんて…。


だけど坂城君は何を思ったのか、急に傘をさっと自分の元に戻した。


「ああ悪ぃ、関係なかったな?じゃぁな」


一瞬優しいと思ったのもつかの間、坂城君はあたしの前を歩いてく。


…む、むかっ……。


なによなによなによ、別に傘なんていらないもん!!走ればいいもん!!


そう思って坂城君の横を速足で通りすぎる。


「ちょっ、お前…」


坂城君のそんな声に一瞬止まりそうになると、坂城君はあたしの腕をつかんだ。


「…何?」


思わずそんな風に答えてしまう。


「…しょうがねぇから入れてってやるよ」


坂城君はそういうと、偉そうな顔をする。


「なっ、別に傘なんていらな…」


そこまで言った瞬間、へくしゅっ!とくしゃみが出た。


「…入るか?」


「いっ、いい!」


そう言った瞬間、またはくしゅっ!とくしゃみが出る。


「…入れ」


「…はい」


もう命令口調だし、くしゃみも2回出たし…と、断れない状況だから、入っていくことにした。