「つーか、受験生とか言うなっつの」


「自覚しないといけないよ、坂城君」


はーぁ、と大きいため息をした坂城君に、諭すようにそう言ってみる。


「本当、次のテストじゃ27点なんてとってられないよ、坂城」


榎並さんは、にやにやと笑ってそう言った。


坂城君が、睨むというよりムッ、とした顔で榎並さんを見た。


「榎並さんって、坂城君より頭いい?」


「うん、坂城よりはいいかな。少なくとも前の小テストじゃ35点はとったからね」


また坂城君がムッとした顔をするが、榎並さんにとってはそれは敗北を認め悔しむ者の顔らしく、みるみる上機嫌になっていく。


語尾に音符マークを感じさせる。


坂城君にとっては、その音符マークが打撃となりダメージを受けているんだろう。


「…おい、神澤」


「は、はい」


神澤、と呼んだ坂城君の声が、4月に脅してきたあの声と同じ威圧感をもっていたため、あたしは思わず初めの頃に戻ってしまった。


顔をふせた坂城君が、よく言えば上目遣い、悪く言えば睨みながらあたしを見る。



「……勉強、教えろ」



「は?」


あたしは思わず、間抜けた声をあげてしまった。