「意外。坂城君って勉強できると思ってた」


「だよねぇ。こんな顔してんだからせめて頭くらい良くないと、ただの顔だけ男だよ?親衛隊さん達の中の坂城王子像は完璧なんだろうから、完璧にならないとだよ?王子ぃ」


「王子とか俺そんなガラじゃねぇんだけど…つか、親衛隊ってなんだよ」


坂城君が榎並さんをまた睨むが、その顔もさっきよりポカンとしたように見える。


たぶん「親衛隊」の存在を本当に知らないんだろう。


「ふん、幸せに気付かないと不幸せに呪われるよ」


「意味分かんねぇ」


結局坂城君も考えることを諦めてしまった。


「でもさぁ、坂城君。あたし達、もう受験生なんだよ。さすがに、数学27点は駄目なんじゃないかなぁ。そりゃ27点なんて半分より上いってればいいだろ、みたいに思ってるかもしれないけど、普通授業で全部習ってるから、50点とってもおかしくないテストなんだよ。それを27点ってもう23点分はなんだったのってなっちゃうよ。だから27点は余裕ぶってちゃいけないよ27点なんてまだまだ」


「おい神澤。……連呼すんな」


無意識に言葉の中に何回か27点をちりばめていたら、坂城君に悲しい顔をさせてしまった。


「へぇ。坂城も気にしてるんだね、27点」


「榎並」


なぜ榎並さんはそんなにも坂城君が睨むような事を言うのだろう。いつのまにか、呼び方も「坂城」になってるし。