家具の配置がすっかり変わっていた。
「何なんだ、何なんだ一体⁈」
俺、模様替えなんてしたっけ?
さっきの女といい、俺は夢でも見ているのか?
アキラは頬を何度もつねったが、ただ痛いだけだった。
「あー、やっと来た」
女が台所から出てきた。
「あなた多分部屋間違えちゃったんだよ。何号室?」
「203号室」
「ここじゃん」
女は言った。
「警察呼ぶね」
「ちょっと待った! 俺の話を聞いてくれ!」
アキラは女からケータイを奪い取った。
「じ、自己紹介しよう! 俺はアキラ」
「千里よ。多分あなたより年上」
「俺、18です」
千里はきっと20代半ばくらいだろう。
千里が口を開く。
「で、あなたはこの203号室が自宅だと言い張るの?」
「そうだ」
「その認識がおかしいよ」
「本当だって!」
アキラはシャツの裾をつかんだ。
「お前が持ってきたこの服は俺のだ。服だけじゃない! この部屋の家具だって全て俺がバイトして買ったものだ!」
千里はまばたきを繰り返した。
「家具は備え付けだったよ。服は…覚えてないなあ」
千里は首をひねった。
「でも、私は正式にこの203号室を大家さんから借りてるよ! ほらこれ見て!」
千里は一枚の紙をアキラの目の前に突き出した。
それは契約書だった。
「嘘だろーーーー⁈」
アキラは叫んだ。