倭国に着いた。

もうぼくは後悔しない。

高まる心臓を必死に抑え、朝廷へ向かう。


「冠位5位、小野妹子です。
聖徳太子からの国書を渡して参りました」

「入れ」


朝廷内には色々な偉い人がいた。

太子より上かは知らないが、
ぼくよりかははるかに上の位の人物だ。

辺りは静ける。


「返書はどうした?」

「......すみません。
航海の途中、何者かに奪われました」

「奪われただと!?」

「はい」


急にざわめいた。

“だから小野妹子は止めとけって言ったんだ“
“真面目な奴ほど抜けてるものってあるよな“


色々な言葉が飛んできた。


だけど、ぼくは何にも感じない。
感じるのは太子との思い出だけだ。