「倭国に帰ったら皆にどう言われるだろうか」


大事な書を預かった身として、
皇帝にきちんと無礼無く対応し
国書を預けなければいけない。

無くした、などは論外だ。

その場合は処刑だろう。

遣隋使になった当時以上に皆から
冷めた目で見られるに違いない。


そんな被害妄想をすると、
やっぱり思い出すのは太子だ。

あの素敵な振る舞いを
ぼくは一生忘れない。




「さて、もう数分で着きそうだ」

ぼくは太子が書いた国書を開いてみた。

「日出ずる処の天子
 書を
 日没する処の天子に致す
 つつがなきゃ.....

へえ、良い書き出しですね」



そして書を閉じ、船を降りた。