「せんぱ...」
何を言おうとしていたかは分からない。
分からないけど、何かを言おうとしていたの。
だけど、その言葉は目の前に突然現れた存在によってかき消された。
「ミキ!今日バイトの日だったんだ〜」
ホッソリと高くてスリムな女の子。
明るめの茶色のボブヘアーに、大きな瞳。
社交的な雰囲気をかもしだしていた。
「穂波」
私は先輩の胸からぱっと離れると、先輩の横にたつ。
グングンと進んで来る“穂波ちゃん”。
すると、スルリと私の特等席に座った。
「パパ!ミキ!お腹空いた!」
私の存在が無いかのような穂波ちゃんの態度に、キュウっと胸を掴まれたようだった。
寂しい。
たったそれだけの事なのに、秘密の隠れ家が自分だけのモノじゃないような感じがして...
なんだかそれがすごく寂しかった。
いつもは快適なその空間が、今日はとても辛かった。