僕らは、あまり会話も弾まず、僕はどこで花火を見ようか考えながら歩いていた。
その時、心優が
「あの、私聞いたんだけど、大通りの所の橋を渡ったとこの、坂の上なら町が見渡せるって聞いたんだけど…行ってみる?」
あの、自分からはあまり発言しない心優が言ったんだ。
だから、僕は、
「そうなの?!んじゃあ、そこにしようよ!」
僕は、少しでも楽しめるようにテンションを上げることにした。

*

人通りも、多くなり橋が人で埋め尽くされそうになっていた。
そこで、警備の人が、
「橋が折れる危険性があるので、なるべく立ち止まらずに進んで下さい!」
と、言っているのが聞こえた。
そんな、声も遠く聞こえてきて、段々と坂の上に近付いていた。
心優は、少し疲れている表情を浮かべてた。
僕は、
「大丈夫?」
とだけ、言った。
心優は、
「もう少しだから、大丈夫!」
と、応えた。
そんな事を言っていると、坂の上に着いた。
案外僕らだけで、他に人がいる気配は無かった。
心優も少し遅れて到着した。
僕は心優に、
「ここ、やっぱり町見渡せるよ!」
心優は驚いたように僕と同じ方を見た。
その時、丁度夕日が真正面にあった。
その夕日の光で町が明るい色に包まれていた。
いつも、青々と輝いている海でさえ色が変わっていた。
心優は、
「キレイ…」
と、僕に聞こえるか聞こえないかくらいの大きさで呟いた。
僕が心優の方を見ると、心優が僕の方を向き微笑んだ。
その笑顔に僕は焦がれた。

花火が、始まるにはまだ充分な時間がある。
僕と心優は、色々な事を話した。
部活動の事や高校について話して、笑い合っていた。

そんな話しをしていたら、いつの間にか日が暮れ、生温い風邪が吹いていた。