月が高く登った頃、
神へのレポート提出の後、
天使長の報告会が始まった。

「セラ天使長!報告を!」

司会の天使がセラを指名し、
セラが席を立つ。

「はい。昨晩申し上げましたが、
悪魔の奇襲に遭い、行方不明になっていたアレンを今日無事に見つけました。
しかし、アレンは規定違反である
人間との接触をしていました」

セラの報告の途中で
他の天使長が質問をした。

「それは立派な規定違反だ!
いくらあの子が可愛かったとしても
適切な処罰が必要だぞ!?」

するとセラはため息を付いて
間も無く、質問に答えた。

「はい。ですから、今彼は忘却室にて
記憶の消却を行っております。
目覚めるのはいつかわかりませんが、
今の任務は私が引き続き遂行させます」

忘却室で記憶を消却させる。
この処罰がどれほど苦しいか、
アレンが抱えていた思いも、
ラウルと出会った時に感じた懐かしさも
目が覚めた時にはなにも覚えていない。
何事もなかったかのように、
処罰を受けた事さえ忘れ、
下級天使ランク11の
資格を取った所から始まるのだ。

「尚、悪魔が人を唆している様子はなく
人間同士の争いも時間と
共に仲直りしていました。
以上です。」

セラがいい終わって席に着くと、
リイカがセラをみた。

「アレンが下級天使ランク11を取った所から始まるなんて、
あんたと出会う前じゃない。
下級天使に上がってから、
本ばっかり読んでたからねアレンは。」

「そうだな……。黒髪の所為なのか
天使の中で一際元気がなかったな……」

セラはふーっとため息を付くと
またリイカに背中を叩かれた。

「あんたねぇ!ため息つくと
運が逃げるんだよ!?たくっ
人間もすーぐため息つくんだから!
運を与えるこっちの身にもなりなさいよ!もう!」

「わりぃ……だけど……
辛すぎてさ……今回の処罰……」

(大事に思っていたから尚更……
自分の事を忘れるアレンに、
どう対応して行けばいいんだ……)

セラの頬を一雫の涙が伝った。