遠くに中山さんの姿が見えるとアタシは慌てて携帯をカバンの中に入れた。


「はい。どうぞ~」



「あっ。ありがとうございますっ!」



中山さんが席につくとタイミングよく劇場の電気が消えた。



そして映画は始まった。




大きなスクリーンを前にしても映画の内容なんて頭に入ってこない。



隣にいるのはあの中山さんなのにアタシはうちに帰りたくて仕方なかった。




これが終わったら何時なんだろう。。



こんな時間にケーキ売ってるんかな。。





アタシはそんな事ばかり考えていた。




隣に座っている彼の横顔を見る。








「ん?」




それに気づいた中山さんがアタシの足に自分のジャケットをかけてくれる。




そうやって優しくされると余計に申し訳ない気持ちでいっぱいになって、そこからアタシはエンディングまで映画に集中した。





「う~。。」



大きく背伸びする中山さんには大人の色気があって周りの女の子達の視線を感じる。



「高崎?」



「はい」



「面白くなかった??」



「えっ??面白かったですよ~。」



「アクション映画はないよな。笑



ごめんな。。つき合わせて」




「全然そんなこと。。」





「よしっ。もう遅いしうちまで送るよ」




「・・・はぃ」




できれば電車で帰りたかった。。




でも中山さんの親切を断ることはできなかった。






・・・ケーキどうしよう