大好きな陸が目の前にいるのにその胸に飛び込むことも出来なければ、昨晩の事を問いただす事もできない。
ただ陸の顔をぼーっと見たまま玄関で立ち尽くしていた。
「アズさん?」
「・・・・」
いつもと変わらない優しい声に感情を全て出してしまいそうになる。
あっ。。
引っ張られた腕は体ごと陸の方に吸い寄せられた。
アタシは精一杯の力で離れようとするのに陸の腕に力には敵わなかった。
「心配したよ」
「・・・・」
「アズさん??」
力の抜けた陸の腕を振り払い寝室へと入ったアタシを陸も追いかけてくる。
陸の方を見ることもなく服をベッドに脱ぎ捨てるアタシは醜くて情けない。
「アズさんっ!!」
「何!!」
自分でも驚くほどの声が部屋に響いた後アタシ達は無言になった。
陸はアタシから離れてソファに座りテレビの電源を入れた後こっちを見ることはなかった。
最悪。。。
目から零れ落ちる涙を気づかれないように窓の方を向きベッドに寝転がる。
なんで陸は何も言ってくれないんだろ。。
昨日の二人の姿を思い出す。
このままアタシが強がってても二人の距離は開くだけ。。
シーツで涙を拭いて寝室のドアを開けるとそこには陸が立っていた。
「アズさん」
「うん」
「話いい?」
「・・うん」
アタシと陸はソファに座り向かい合う。でもお互いに言葉はでないまま沈黙が続いた。
テレビから聞こえてくるお笑い芸人の声だけが部屋に響く。
「・・・誰?」
勇気を出してアタシからでた言葉はその一言だった。アタシが一番聞きたかった事。。
「えっ?」
「アタシ見てた」
「・・・」
少し困ったような陸の顔を見たときアタシの中で何かが切れた。
向かい合ったまま沈黙が何分続いただろう。
アタシは陸の目をジッと見て息を吐いた。