1時間ほど経って遥は真山さんの車で帰っていった。


その時にアタシも一緒に帰っていれば良かったのかも知れない。


違うDJに変わりホールに下りて来ると陸は一瞬で女の子達に囲まれた。


アタシはその場から少し遠くに離れてマキにタバコをもらう。今まで我慢してたけど今日のこの雰囲気じゃ無理だった。




「なんか想像以上に少年は人気者やん。笑」



「あ。。うん」


「アズが惚れてる理由がちょっとは分かったかも。」



今までどちらかと言えば否定的だったからマキのその言葉にアタシは嬉しくなった。

でもアタシの場所から陸の姿は見えなくなっていた。



どこ行ったのかな。。



携帯は圏外だし陸と連絡を取る方法がなかった。


そしてアタシ達は本日3杯目のビールを取りに行く。


「ゴメン、ちょっとトイレ」


「はいよ」



アタシのビールをマキに持ってもらい一階にあるトイレに急いだ。


階段も人まみれで女の子のつけている香水の匂いが混ざり合っていた。




えっ。。


トイレとは逆方向の入り口のドアを開けて外へ出て行く陸の姿が見えた。



その手には女の子の手が握られている。



なんで。。


多分陸と同じくらいの年で後姿だけ見ても華奢(きゃしゃ)なのが分かった。


アタシはトイレに行くことも忘れてマキの所へと戻った。


「マキ帰ろう」


「なんで?」



「。。。帰ろ」



「えっ。。うん。ここ空気悪いし帰ろっか。よし帰ろう」




マキはアタシの様子がおかしい事に気づいて何も聞かずに店からアタシを連れ出してくれた。



タクシーを捕まえて駅へ向かうとギリギリ間に合った終電に飛び乗った。



陸からの連絡はない。。



「アズ亮くんの店で飲みなおさない?」



「うん」


このままうちに帰っても余計な事を考えてしまうだけだしマキに話を聞いてもらいたかった。