「明日は会社来れそうですか??」


「う~ん。。どうかなぁ。。まだちょっとキツイかも」



たまに咳き込む中山さんは辛そうでこれだけ食べたら早く帰ろうと思っていた。



そんなアタシの考えてる事を見透かしたようにアタシの顔を見て笑いながら中山さんは席を立った。



「これあげる」


「えっ?」



「今日のお礼。笑」




そういって渡されたものはこのカウンターで焚かれていたお香だった。


甘くて心が落ち着くそんな匂いのお香。



「いいんですか??」




「エエよ。まだたくさんあるから」



アタシはそれを遠慮なく受け取りカバンに入れた。



何だろう。。


こういうのが大人の男の人の気遣いというものなのかな。



アタシはこの空間にいるだけで自分が女でいられるような気がしてこの雰囲気に酔っていた。





あっ。。



急に鳴った携帯の音に心臓が止まりそうになる。


陸。。




「出てエエよ。笑」



「あっ。。でも。。」




アタシが出ようか迷っていると電話は切れた。




そんな携帯を握り締めたままのアタシを中山さんは少し悲しそうな顔で見ていた。



「あの。。」




「ん?」



「アタシそろそろ失礼しますね」



そういって立ち上がったアタシの腕は中山さんに掴まれてそのまま胸の中に引き寄せられた。



この時突き放すことも出来たのかも知れない。


でもアタシはそうすることもなく彼に抱きしめられたまま動くことが出来なかった。





「高崎?」



「・・・はい」





「俺じゃ無理なのかな?」




「・・・・」





頭には嬉しそうに笑う陸の顔が浮かぶ。



「・・・すみません」




「・・・そっか」



そしてそのままゆっくりとアタシは中山さんから離れた。