「……み!おい、えーみ!…笑咲?」 遠くで私を呼ぶ声がした。 「あっ!ごめんごめん!」 悪びれながら駆け足で彼の隣に戻る。 窓からこぼれそうになるオレンジをみて元カレの髪を思い出していたなんて言えるわけがない。 「どしたの?考え事?」 孝志がくるっと振り向いて困った顔できいてきた。 「ううん、違う。なんでもないっ!」 なんともないような顔で答える。 …嘘つき。 心の中で自分を叱った。