ここで涼に頼る訳にはいかない。


曖昧な記憶を辿るように、再び歩き始めた。


ぐいっ。


「え?」


手をいきなり引かれて、私は涼の胸に飛び込んだ。


涼に抱きしめられている。


そう理解するのに、時間はかからなかった。


「…涼?」


「あの場所に行くんだろ?」


優しい声だった。


「なんでわかったの?秘密にしようと思ってたのに」


「俺が、あの場所を忘れる訳がないだろ」


思わず笑ってしまった。


「そっかぁ」



「ああ……行こう」


今度は、涼に手を引かれて歩き出す。