「俺、今から行ってくる」
昼休み、わざわざ報告しにくるケイ。
その顔つきは今までに見たことがないようなもので、ケイの決意が感じられた。
今更止めることなど到底無理だ。
「………」
あたしはなにも応えることができなくて、ケイは一瞬不思議そうな顔をする。
「なになに?どこ行くの~?」
なにも知らない百合が、あたしをさえぎるようにケイに聞く。
「あ!もう香織ちゃん来てるかもしれないから、行くわ!ナミに聞いといて!」
ケイは勢いよく教室を飛び出した。
「え――…?香織……?」
百合は、“まさか”といった表情であたしを見る。
“香織ちゃん来てるかもしてないから”
勘の良い百合は、ケイのこの言葉で気づいてしまったのかもしれない。
ケイがこれからなにをしに行くのかを。
そして、
そのことをあたしが知っていた、ということも。