「あたし達が樹里を1人にすることはないよ。傍に居る」
抱きしめられたまま頷く樹里
俺の手は握ったまま。
「行こうか。ショッピングモールで買い物しよ」
田舎町であるこの場所に唯一あるショッピングモール
此処を起点に生活している
小さい子からお年寄りまで利用する憩いの場だ
食料品、雑貨、衣料品、日用品。
遠くまで行かなくても此処に来れば揃うという便利さ。
「大翔、荷物持ちお願いね」
「分かってるよ」
此処からは冬華に任せるか。
樹里を観察してどう接して良いか考えよう
それが俺の役目でもあるから。
「樹里、思いっきり楽しめよ。怖がる必要はない。買い物して気分転換すると良いよ」
そうすると気持ちも落ち着くだろう
それからは2人楽しそうに買い物をしていた
雑貨を見たり、洋服を見たり。
2人とも楽しそうだから良いや。
その証拠に笑ってるし
冬華の笑顔、久しぶりに見たな
樹里の笑顔はやっぱり可愛い
「樹里、バラの花好きなの?」
俺の問いかけに頷いた樹里
《後ね、犬も好き》
と携帯で打っていた
やっぱり女の子なんだな
《冬華、子供服見て良い?》
「良いよ。見に行こ」
自分達の買い物が済んだ後、子供服を見ることになった
「子供服?なんでだ?」
《樹音用》
そういえば、何か買ってあげたいって言ってたな
子供服を見る2人も楽しそうで目が輝いていた
俺も樹音に何かプレゼントしようかな。
2人とは別行動で樹音の喜びそうなものを探した
樹音にはヘアゴムにした
髪の毛長かったし樹里と一緒で可愛いものが好きみたいだから
冬華と樹里にはシュシュ
休みの日でもオシャレしたいだろうし。
「居たー!!探したよ」
冬華と樹里が俺を見つけて近づいてくる
手にはたくさんの荷物を抱えて。
「2人とも良い買い物出来たか?」
2人が笑顔で頷く
「ゲーセン行こ。」
ゲームセンターに行くとたくさんの人で賑わっていた
「プリクラ撮ってくるね」
樹里の手を引っ張る冬華
冬華が笑えば樹里も笑う
そんな光景が微笑ましい
楽しそうに去っていく2人を眺めた
さて、俺はどうしようか。
樹里達が戻って来るまでUFOキャッチャーでもすることにした
お菓子を取ったりチェーン付きのぬいぐるみを取ったり…
こういうこと案外、好きだったりする
樹音へのおやつが出来たな。
「やっぱりたくさん取ったね」
一段落したらしい冬華達が戻って来た
冬華は俺がこういうこと得意だから言ってるんだろう
「たくさん買い物出来て遊べたし、樹里が疲れてるみたいだから帰ろ」
樹里を見ると顔色が良くなかった
「樹里、帰るまで耐えられるか?」
小さく頷いた樹里だけど耐えられそうにないみたいだ
れっきとした俺の勘だけど…
「あたし、これから用事があるの。大翔、お願い出来る?」
「もちろん。ちゃんと送り届けるよ」
「お願いね。樹里、今日は楽しかったよ。また遊びに行こ。」
冬華とはショッピングモールの前で別れた
「樹里、荷物持てるか?」
文字が掛けないので頷くだけだった
「休憩しような」
俺は樹里を公園へと連れて行く
そして、ベンチを見つけ座った
樹里はボードを取り出し何かを書き始めた
叩かれたので覗いて見ると…
《家に帰りたくない》
と書いていた
「どうして?」
《みんな、申し訳なさそうな顔をするの。悲しい顔をするの》
話せない樹里は表情で察知してるんだな
「俺んち来るか?」
《良いの?迷惑じゃない?》
驚いていた樹里だけどボードにペンを走らせていた
「俺、一人暮らしだから。てか、おいで。」
強引かもしれないけど、誘った
樹里の気が休まるなら…
「コンビニに寄ってから帰ろう」
此処ではゆっくり出来ないからな。
コンビニといってもこの田舎町には1軒だけ。
ショッピングモールがあるけどこのコンビニは24時間営業ってヤツ。
「樹里、何が好き?」
コンビニに着き樹里に聞く
すると樹里はデザートのコーナーに行きシュークリームを指差した
「甘いもの、好き?」
樹里は笑顔で頷いた
《おなか空いた》
そういえば、何も食べずに遊んでたな。
おにぎりでも買っておくか。
樹里が食べなきゃ俺が食べるし。
ある程度の物を買い支払いを済ませる
樹里も何か買っていた
《お金…》
「良いよ。気にすんな。俺が出す」
俺は樹里の頭を撫でた
「じゃあ、行くか。それほど遠くないから直ぐに着く」
俺は樹里を連れて帰宅したのだった
初めて会った
君のお姉さんは
とても優しくて
綺麗で可愛い人でした
***************
冬華と大翔とお買い物
怖かったけど、2人のおかげで外に出れたし楽しめた
本当は外に出るのも怖くてどうしようって思った
だけど、大翔が落ち着かせてくれたおかげで時間は掛かったけど外に出れた
冬華と出掛けるなんて初めてだったし好みも一緒でお揃いの物も買った
部屋を可愛くするための雑貨も冬華と一緒に選んだ
洋服だって見れたし。
こんなに楽しい時間を過ごしたのは初めてだった
今は冬華と別れて大翔と一緒
帰らなきゃいけないけど、帰りたくなかった
だから、《帰りたくない》って書いたら急きょ大翔の家へと行くことになったんだ。
コンビニで買い物して行く
大翔が買い物をしている間に飴を購入した
フルーツの飴
なかでも、イチゴ味とピーチ味が好きなんだよね
「樹里、行こうか」
大翔はあたしのペースに合わせて歩いてくれる
今まではそんなことなかったな…
みんなさっさと行っちゃうし
「樹里、キツくないか?大丈夫?」
あっ、いけない。
考え事してた…
あたしは“大丈夫”という意味も込めて頷いた
「もう少しで着くからな」
あたしの頭を撫でて優しく微笑んだ
やっぱり優しいな…
あたしに対して優しくしてくれた男の子大翔が初めてかもしれない
「樹里、着いた」
大翔は一つの5階建ての新築のアパートの前で立ち止まった
「此処の2階の右端が俺の部屋」
大翔は丁寧に教えてくれた
「行くか。荷物置いてゆっくり休もう」
そして、大翔に付いていく
アパートでこんな田舎町なのにセキュリティーもしっかりしている
「ただいま」
「あっ、お帰り」
中からは綺麗で可愛らしい人が出てきた
あたしは此処に居たらいけない
そう思って大翔から離れ帰ろうとした
「樹里、待て。帰るな」
と言って引っ張られ大翔の腕の中にすっぽり収まった
「誰?この子。めっちゃ可愛いんだけど。」
女の人は大翔からあたしを離して抱きしめる
「姉貴、止めて。樹里、びっくりしてるから」
と言って再びあたしを抱きしめた
……ヤバい、恥ずかしい
多分、あたし真っ赤だ