【更新中】キミの声、聞かせて

君と過ごす時間が

俺にとっては

とても大切な日々

だから君には

笑っていて欲しいし

君との時間は

1秒1秒大切にしたい


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春川祭も無事に終わり、樹里の写真の展示も大好評だった


樹里は楽しそうに写真撮っていたし俺も俺なりに楽しむ事が出来た


そして、今日から代休で学校が休み


俺は3日、樹里は1週間


樹里の休みが長いのは親父の診察も兼ねてるため。


校長が許可したんだから良いんだろう


「樹里、準備出来たか?」


俺の顔を見た樹里は笑顔で頷く


休みを利用して樹里と出かけるのです。


直樹さんにも校長にも承諾済み


奈那達と遊ぶ事も決まっている


奈那達も学校だが担任から許可を得たらしい


“樹里のやりたいことをさせて良い”と許可が出たらしい


樹里のこと理解してるから言えることだ。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんのことよろしくね」


小学1年生とは思えないほどしっかりした口調で樹音がいう


樹音は最近、身長が伸びて可愛さが増してきた


可愛さが増してきたのは樹音だけではなく樹里もだけど…。


「大翔くん、娘をよろしく頼むよ。」


「もちろんです。」


《大翔が一緒なら大丈夫。》


樹里はそう書いたボードを直樹さんに見せた


「薬は持ってるよな?なんかあったら大翔くんを頼るんだよ。カメラも忘れずにな」


《薬も持ったし、カメラはあたしの相棒だからちゃんと持ったよ‼行ってきます》


「おう。気を付けて。帰って来たら写真見ながら話聞かせてな」


「じゃあ、行ってきます」


笑顔で頷く樹里と共に直樹さんと樹音に挨拶をして出発する


直樹さんが送ってくれると言ったけど断った。


公共交通機関を使って移動するのも樹里が前進するために大事なことだから。


こういう事に慣れることも必要だと思う。


その提案をしたとき最初は渋っていたけど
…。


“こもってばかりじゃダメだよね。挑戦するのも前に進むために必要だよね。1人だと怖いけど、大翔と一緒なら大丈夫”


と言ってたから公共交通機関を使う事にしたんだ。
樹里がまだ1人で遠くまで行動するのが怖いことは分かってる


でも、それは樹里のためにはならないと親父にも言われた。


声が出るように支えてあげるのも大事なこと。


だけど、それ以上に背中を押してあげるこも大事なんだと親父に教わった


大好きな樹里の隣にいて一緒に笑ってたくさん思い出を作る


“同じ趣味があるんだから貴方に出来ることをすれば良いよ”と母さんも言ってくれた


「樹里、バスに乗るよ」


途端、樹里の顔が険しくなった


「怖いのは分かる。でも、これも樹里が前に進むために必要なこと。これを乗り越えないと奈那に会えないよ」


そういって樹里の手を握ったままバスに乗り込む


今、俺たちが住んでるのは田舎


これから目的地までバスで1時間と少し。


「大丈夫。樹里は1人じゃない。俺がついてる。怖いのもちゃんと分かってる」


それを聞いた樹里は少し安心した表情を浮かべた


「俺はちゃんと隣にいる。だからキツかったら寝てて良いよ。起こすから」


最初は頑張って起きていた樹里だけど、いつの間にか俺の手を握ったまま眠っていた
「樹里、起きろ。もうすぐ着くぞ」


気持ち良さそうに眠ってる樹里を起こすのは可哀想だが起こす。


目的地のバス停に着き荷物を持って降りる


「にしても、ぐっすり寝てたな」


《怖さを忘れるには寝るしかなかったの》


樹里らしいと言えば樹里らしい


《これからどうするの?》


「奈那達が来てるはずなんだけど…。」


キョロキョロと探してみる


「樹里ー‼こっちだよ」


声がした方を見ると奈那と勇悟がいた


「樹里、このまま買い物行くけどキツくないか?」


樹里の体調が1番だ


《寝てたから大丈夫》


ボードを見せてニコッと微笑んでくれた


「奈那、樹里に会えるの楽しみにしてたんだよ。楽しみすぎて眠れなかったってさ」


勇悟が笑いながら教えてくれた


「だって、樹里と遊ぶの楽しいんだもん」


奈那に言われて嬉しかったのか樹里は笑っていた


それからは時間が許す限りショッピングやファミレスで話したりして4人の時間を楽しんだ
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「大翔、樹里ちゃん」


ファミレスから出ると聞いたことのある声がして振り返る


そこにいたのは親父だった。


忙しいはずなのに何でいるんだ?


疑問符ばかり浮かぶ俺に樹里が肩を叩きボードを見せてくれた


《あたしに連絡があったから居場所を教えたの。そしたら迎えに来てくれるって返信が。》


なんだかんだいって親父も母さんも樹里には甘い


「大翔に連絡するより樹里ちゃんにした方が早いからな」


「我が息子より樹里が先か」


なんとなく妬ける



「あれ、大翔が拗ねてる?」


奈那にはかなわないな


「奈那ちゃん、勇悟くん、大翔の父です。うちで良かったらゆっくりしていってね。妻も2人に会えるの楽しみにしてるよ」


母さんも奈那に会ってみたいって言ってたし。


「樹里、帰ろうよ。さすがにあたしも疲れてきた」


奈那の一言でみんな仲良く帰宅した
「お帰りなさい」


慌ただしくはあるが母さんが出迎えてくれた


「「ただいま」」


俺と親父の声が重なる


勇悟と奈那を見ると緊張しているらしく表情が硬い


《2人ともそんなに緊張しなくても大丈夫だよ》


樹里の書いたボードを見て2人は微笑んだ


「2人のことは息子と樹里ちゃんから聞いてるわ。奈那ちゃんは名前が似てるから会って見たかったの。よろしくね」


母さんは奈那に会いたがってたんだよな。



「「よろしくお願いします」」


「うちで良かったらゆっくりして行ってね」


伝えたいことだけ伝えると母さんは去って行った


「樹里、荷物置いてきな。俺は奈那達連れて和室に行ってるから」


樹里の姿を見届けてから俺も行動を開始する


「緊張したー。にしても大翔の家は広いな」


今まで挨拶以外話さなかった勇悟が口にした


「樹里も最初に来た時は驚いてたけどね。今日から俺たちが泊まるのはここだよ」


今日から4人で和室で過ごすことになっている
「そういえば、樹里は?」


荷物を整理している奈那が尋ねる


「樹里は荷物を置いて休憩してる。親父が樹里専用の部屋を用意してるんだ」


「樹里専用の部屋があるの?」


「"1人の時間も必要だから"って部屋を作ったんだよ」


"どれだけ樹里のこと好きなんだよ"って思ったけど、今の樹里には必要なことの1つ


「ちゃんと樹里のこと考えてくれてるんだね」



奈那も納得したようだった


------------トントン


扉を叩いてから樹里が入って来た



そして、俺に近寄って来て携帯を渡した


「電話?」


樹里は頷くとノートに


《小牧先生。大翔のお父さんと話してたんだけど大翔にかわって欲しいんだって》


と書いてるのを見せて来た



小牧が用事って何だろう



『大翔ー。電話に出れそうかー?』



周りに聞こえるくらいの音量で小牧の声が聞こえた
「樹里、奈那達といて」


それだけ伝えると樹里から携帯を受け取った


「もしもし、代わりました」


『遅いぞ。まぁ、樹里は筆談だし時間がかかるのはわかってるけど。』


ぶつぶつ小言を言うわりには樹里のことちゃんと理解してるんだよな。


「何か用事ですか?」


『樹里のこと1日借りるから』


--------はっ?なんで?


小牧は俺の考えてる事が分かったのか続ける。


『俺も樹里のこと知らなきゃいけないんだよ。樹里を借りるのはお前がこっちに帰って来てからだから心配すんな。』



「でも、小牧の授業は?」


俺たちの担任でもあるけど、他に受け持ってるクラスがあるはず。


『1日だけ有給取得した』



サラッと言うってことは本気なんだな、この人。
『でも、今は大翔や高千穂達といることが大事だからな。樹里の体調を見ながらやりたいことさせてあげな』



「分かってます。樹里の心の傷を癒すのが最優先ですから。」


樹里の動向次第だけど。


『流石、大翔だな』



「そりゃあ、樹里の彼氏ですから。樹里の1番の理解者でありたい。支えになりたい」


小牧相手に恥ずかしいこと言ったな、俺は。



『お前、ほんとに変わったな。俺は嬉しいよ』



この人は本当に嬉しいんだ



なんとなくだけど、声のトーンで分かる


まぁ、小牧にはたくさん迷惑掛けたし


樹里に出会うまでの俺は相当荒れてたしな


荒れてた俺に親身になってくれたのが小牧だった


「小牧にはたくさん迷惑掛けたのは自覚してるから。先生が居なかったら俺は荒れたままだったし。こんな俺の為に親身になってくれてありがとうございます」


するとすすり泣く声が聞こえた