「樹里ちゃん、これはあたし達からね」
花歩さんはテーブルの一角を指差した
そこにはラッピングされた物の山
《あたしにですか?》
信じられなくて聞いてみた
「これは俺達から樹里への誕生日プレゼント」
困惑するあたしに佐々木先生が教えてくれた
こんなにたくさんもらって良いのかな?
「樹里、遠慮しないでもらって良いんだよ。みんな樹里のことを想ってしてくれたことだから」
こんなにたくさんの誕生日プレゼントなんて初めてだからどうして良いか分からない
いつも、忘れられてるんだ
「おねーちゃん、だっこ」
眠そうな花菜ちゃんを抱き上げる
「花菜も樹里には甘えるんだな」
佐々木先生は驚きつつも嬉しそうだ
「樹里ちゃん、せっかくの誕生日なのに花菜の相手してくれてありがとう」
申し訳なさそうにする奏哉さんにあたしは首を振った
花菜ちゃんをしばらく抱いて居ると眠っていた
寝顔、可愛い。癒される
「久しぶりに樹里ちゃんに会えて嬉しかったのね」
花歩さんはあたしから花菜ちゃんを抱き上げながら呟いていた
《楽しかったです。ありがとうございます》
と書いたボードを見せると奏哉さんも花歩さんも梨莉さんも微笑んでくれた
こんなに楽しかった誕生日、初めてだった
「写真、楽しみにしててね。花歩、あたし達の出番だよ」
二人は楽しそうにしていた
「樹里もゆっくり休みなよ。後は大翔くんと過ごしなね」
“じゃあ、帰るね”と言って奈那は勇悟くんと仲良く帰っていった
あたしと大翔も奈那達みたいに仲良しで居たいな
「大翔、後は俺達が片付けるから樹里ちゃんとゆっくり過ごしな」
奏哉さんの言葉に甘えてあたし達は部屋に戻った
「樹里。おいで」
大翔は手招きであたしを呼ぶ
あたしは恐る恐る大翔の隣に座った
「そんなに固まらなくて良いよ」
笑いながらあたしの頭を撫でた
「樹里、おめでと。これは俺からのプレゼント」
大翔はあたしに袋を渡した
「開けて良いよ」
袋を開けてみると可愛らしいフォトフレームが入っていた
「それを見た時、すぐに樹里にピッタリだと思ったんだ」
彼氏からのプレゼント、貰えるなんて思ってもなかった
「まだ、あるんだよ」
大翔は小さな箱を取り出した
…今度は何だろ?
中身は可愛らしいリング
「奏哉さんに頼んで作って貰ったんだ」
《こんなに高そうなモノ、あたしがつけて良いの?》
あたしが身に付けるにはもったいない気がする
「俺はね、樹里につけてて貰いたいの」
大翔の目は真剣だった
「俺は、樹里にしか興味ないから」
ストレートに言われると恥ずかしいな
「他の人達からのプレゼントも開けてみたら?」
あたしは頷くと一つずつ開けてみる
奈那はチェック柄のリュック
一緒に買い物行った時にあたしが“可愛い”って言っていたヤツ
勇悟くんからは可愛らしいガラスのコップ
李花ちゃんと未歩ちゃんからはシュシュ
花菜ちゃんからはタオル
花歩さんからは帽子
奏哉さんからはブレスレット
梨莉さんからは自分がデザインを担当した発売前のネックレス
佐々木先生からはたくさん写真が入りそうなフォトアルバム
こんなにもらって良いのかな?
「親父達からも預かってるんだ」
大翔は紙袋を持ってきた
これはお父さんが大翔に預けた紙袋だ
「親父と母さん、姉貴、直樹さん、樹音、冬華、琴音、亮介からだよ」
みんな、優しすぎる
こんなにプレゼントを貰った誕生日は初めてだ
「みんな、樹里が大好きだからしてることなんだよ」
《ありがとう》
涙でぐちゃぐちゃなあたしはこう書くことしか出来なかった
そんなあたしを大翔は優しく抱き寄せてくれる
声が出なくなって落ち込んでばかりだったけど、大翔に出会えて幸せを感じることが出来る
誕生日も忘れられないモノになった
声が出たらたくさんの人にお礼を言わなきゃいけないな。
たくさんの人に祝って貰った誕生日は幸せを感じる一時でした
君と居ると
“充実している”と
実感出来るのです
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樹里の誕生日パーティーは成功に終わった
サプライズ成功して良かった
樹里の調子も良かったみたいだし
誕生日パーティーの次の日は勇悟と奈那と遊んだ
一緒にショッピングを楽しんだり夜は大量の花火んしたり…
本当に充実
樹里と居ると楽しくて仕方ない
樹里は話せなくて悪戦苦闘する時もあるみたい
だけど、俺は焦る必要はないと思うんだ
どんな結果であれ樹里を支えるいう想いは出会った時か変わっていないから…
こんな思いになっのは紛れもなく樹里のおかげ
樹里には樹里らしく居てほしい
だから、俺に出来ることをする
夏休みの課題も樹里と一緒に終わらせた
だから、思い切り遊べる
「樹里、どこに行きたい?」
俺の部屋でくつろいで居る時に樹里に聞いてみた
《大翔と一緒に居れるならどこでも。強いていうならいちご飴のおじちゃんのとこ》
「いちご飴のおじちゃんってショッピングモールの駄菓子屋だよな?」
夏祭りの時に話してたから覚えてる
樹里は嬉しそうに頷いた
「今から行くか」
暑いけど家にこもりっぱなしも良くない
やっと少しずつ樹里が外に出始めたんだ
無理はさせたくないけど、調子が良いときに連れ出さなきゃいけないな
《良いの?》
樹里は必ず“良いの?”と聞く
良いに決まってる
樹里となら何処に行っても楽しいから
「でも、無理はさせない。樹里の体調が1番」
すると樹里は口パクで“行く”と答えた
口パクの時は体調が良い証拠
俺達は準備をしてショッピングモール向かった
ショッピングモールは人でごった返していた
はぐれないように樹里の手を握った
最初は恥ずかしそうにしてた樹里だけど、最近は嬉しそうにするので俺も嬉しくなる
人込みを避けながら駄菓子を目指す
“駄菓子屋、いこい”
此処みたいだな
「おー!!樹里ちゃん、来たんだね。待ってたよ」
俺らに気付いたおじさんは声を掛けてくれた
おじさんが声を掛けてくれたことで樹里も嬉しそう
「さっ、入って」
中に入ると駄菓子がたくさんで懐かしかった
内装はとても明るいもので…
駄菓子屋とは思えない
だけど、居心地が良くて懐かしかった
樹里はというと楽しそうに駄菓子を見ていた
「君は…。樹里ちゃんの彼氏さんかい?」
俺は素直に頷いた
「そうか、そうか。樹里ちゃんの雰囲気が柔らかくなったのは君のおかげだね」
おじさんは1人で納得しているようだ
「自己紹介しなきゃだな。憩祥吉(イコイショウキチ)です。宜しく」
「相馬大翔です」
軽く自己紹介を済ませると祥吉さんは樹里を見ていた
「君が彼氏ということは樹里ちゃんが話せないのも知ってるんだな」
“それはもちろん”という意味で頷いた