【更新中】キミの声、聞かせて

《どうして?》


あたしは咄嗟にそうボードに書いた


「手紙に書いたよね?探しに行くって。佐々木先生に聞いてやってきたの」


あの手紙の内容は本当だったんだ。


嬉しさと戸惑いで涙が出る


「なんで、あたしに何も言わずに引っ越すのさー!!あたし、寂しかったんだからね」


奈那は目に涙を溜めながらあたしを抱きしめてくれた


「一言くらい言って欲しかったよ。樹里のバカ。グスッ…」


身長の高い奈那。


そんな奈那にあたしはすっぽり収まる


「ずっと、会いたかったの。だから、樹里を探しに来た。だけど、学校の場所しか聞いてなくて…」


“どうしようかと思ったらあの男の子に会ったんだ”と大翔のことを指差した


だから、大翔は奈那の名前を知ってたんだね
「勇悟も樹里のこと、心配してたんだからね」


椎田勇悟(シイダユウゴ)くん


奈那の彼氏の名前


《ごめん》


口パクで言ったの分かってくれるかな…?


「謝らないの。こうやって元気な顔見れて安心したよ」


やっぱり奈那は優しい人だ。


……あっ、そういえば大翔は?


大翔はフェンスに寄っ掛かっていた


あたしが見ているのに気付いてくれてこっちに近寄ってくる


「樹里、話せたか?」


大翔の問い掛けにあたしは頷いた


大翔が背中を押してくれたおかげだよ


「相馬くん、樹里のこと教えてくれてありがとう。教えてくれなかったら諦めて帰ってた」


もしかして、ジュース買いに行くと言って遅かった理由は奈那と話してたのかな?


「俺はなにもしてないよ」


大翔はあたしの頭を撫でながら話していた
「樹里のお父さんも妹も元気にしてる?」


あたしは小さく頷いた


《奈那、今日はどうするの?》


「何も予定立てずに来ちゃった」


田舎町だから交通手段、限られてるしな


「じゃあ、俺の家にでも来るか?樹里は直樹さんに話せば分かってもらえるからな」


「相馬くん、両親は?迷惑じゃない?」


「俺、1人暮らしだし。2人でゆっくり話せるだろ?」


家も良いけど奈那とゆっくりお話したいな


「あたし、コインロッカーに荷物置きっぱなしなんだよね」


奈那の荷物取りに行かなきゃね


「あー!!大翔、あんた何処に行ってたの?探したのよ」


「あぁ、何も言わずに行ってたな。樹里、此処にいろよ。戻って来るから」


大翔はあたしの頭を撫でると七絵さんの所へ行ってしまった
「座ろうか」


奈那に促され座る


「ねぇ、相馬くんって樹里の彼氏でしょ?」


奈那には隠し事出来ないな


あたしは素直に頷く


「だよね。樹里を見つめる彼の目、凄く優しいし。普通、写メなんてないでしょ」


奈那の観察力には参る


《あたしには勿体ないくらい優しい人だよ。ちゃんと声が出ない事も理解してくれてる》


「そっか。男嫌いな樹里にも彼氏が出来たんだね。」


大翔は良い人。


「彼、樹里のことちゃんと考えてくれてるみたいね。行動見てれば分かるよ」


そう言われて恥ずかしいな


「彼が樹里のこと理解してくれてるなら樹里も彼のこと、理解しなきゃだよ?」


あたしは力強く頷いた


あたしももっと大翔のことを知らなきゃいけない
「それに、樹里と相馬くん、お似合いだね」


大翔って身長高いから見上げるんだよね


《でも、奈那と勇悟くんもお似合いだよ》


「えー!!格好良くて優しい彼氏の居る樹里に言われたくない」


奈那は膨れっ面になった


こういうとこも変わってないな


「2人とも帰るぞ」


「ほら、相馬くんが呼んでるよ」


あたし達は荷物を持ち大翔に近寄る


「奈那、荷物取りに行くか。何処に置いてる?」


「ショッピングモールのコインロッカー」


“あそこだな”と呟いて歩き出した


あたしは必死に大翔について行く


……追い付けない


追い付けなくて立ち止まってしまう


「あっ、樹里。ごめん」


あたしの異変に気付いた大翔は戻って来て手を握ってくれた
「歩くスピード早かったな。」


そう呟くと2人ともあたしの歩くスピードに合わせてくれた


「樹里のお父さんに会うの久しぶりだなぁ」


何も言わずに引っ越しちゃったから久しぶりだよね


ショッピングモールに着くと奈那の荷物を取る


「此処のショッピングモール広いね」


「田舎町にしては大きいな。明日、ゆっくり来てみるか?」


「うん。久しぶりに樹里との時間も楽しみたいしね」


《奈那、いつまでこっちに居るの?》


すぐ帰っちゃうのかな?


「何も予定立てずに来ちゃったんだよね。」


奈那って何処かぶっ飛んだとこがある


「“樹里に会いたい”って思ったら行動に出ちゃった」


“ヘヘッ”と笑う奈那


相変わらずだな。
奈那はあたしの親友でありお姉さんみたいな存在。


たまにぶっ飛んだこともあるけど、奈那だから許せることも多い


茶色のストレートの髪に大きな目


お人形さんみたいだし大人びている


あたしはそんな奈那が羨ましい


奈那は同い年なのに年上に間違えられる


可愛いし綺麗だから間違えられたりするよね。


「樹里、もうすぐ家に着くぞ」


大翔の声がして我に返る


「あっ、やっぱり…」


お父さんはあたし達の姿を見つけるとそう呟く


「奈那ちゃん!!輝明(テルアキ)が探してるよ!!」


お父さんは顔が怒ってるけど、安心した表情を見せた


「輝明から電話があったんだ。見つかって良かった」


もしかして奈那、何も言わずに此処に来たかな?
「お父さんに何も言わずに来ちゃったからな…」


奈那は一人っ子


奈那のお父さんである輝明さんは奈那のことが大好き。


1人娘である奈那のことになると心配でたまらないらしい


極度の心配性


「輝明に言わなきゃダメだよ。心配してるのが丸わかりだったからね」


「ごめんなさい。でも、どうしても樹里に会いたかったの」


奈那は輝明さんに連絡して居場所を伝えていた


「直樹さん、樹里連れて帰って良いですか?」


「良いよ。大翔くんが良いならね。樹音が居ると奈那ちゃんとゆっくり話せないだろうし。娘を頼むよ」


なんてあっさりOK出ちゃった


「樹里のお父さん、ごめんなさい」


「輝明にちゃんと説明したし謝らないで。」


お父さんは優しく奈那に話し掛けていた
「じゃあ、行こうか」


大翔の言葉にあたし達は歩き出した


「2人とも、ちょっと食料品買って良いか?」


あたし達は同じタイミングで頷いた


「奈那、好き嫌いは?」


「ないよ。何でも食べれる」


奈那は好き嫌いなくて何でも食べれるのも変わってないね


食料品を買って大翔の家に帰る


「思ったより広いんだね」


奈那は大翔の家に着くとそう呟いた


「案外、気に入ってるよ。この部屋」


住み心地良さそうだしね


「樹里、風呂沸かして来て」


ボタンを押すだけだったよね


あたしは大翔に言われた通りお風呂場に言ってボタンを押す


リビングに戻ると大翔はキッチンに立っていた


やっぱりカッコいいな。