【更新中】キミの声、聞かせて

「先生の手伝いに行くんだ。」


「そっか。頑張ってね」


すると、制服に着替えた樹里がやってきた


樹里の制服姿、久しぶりだな。


やっぱり可愛い


「じゃあ、行こうか。」


「いってらっしゃーい」


樹音に見送られ学校へ向かう


樹里は樹音の姿が見えなくなると俺の手を握ってきた


……可愛いヤツ


手を繋いだまま学校へ行く


「おっ、来た来た。悪いな」


玄関先で小牧は待っていた


「どうせ雑用に使うんだろ?」


小牧のことだから。


「さすが、大翔だな。1人じゃ大変でな」


だから、俺らを呼んだのか。


「ちゃんとご褒美やるから手伝え。」


「分かりました」


頷いてから樹里と一緒に教室に向かう
「あっ、作業場所、会議室だから」


“先に行ってろ”という小牧の言葉を聞いて会議室へいく


長机に並んだ書類の数


これをやるってか。


樹里を見ると困惑した表情を見せている


「待たせたな。この書類を纏めて欲しいんだ」


束にするんだな。



「これ、俺らに配るプリントじゃないな」


「あっ、バレた?」


“あっ、バレた?”じゃねーよ


「だって、1人じゃ終わらないからさ」


「じゃあ、さっさと終わらせよう」


俺らは作業に取りかかる


俺と小牧で書類をひとまとめにし樹里がホッチキスで止める


その作業を繰り返す


「はぁ…」


思わずため息が漏れる


これ、いつになったら終わるんだ?


昼までに終わればいい方か。
「手伝わせてすまんな。」


「絶対、申し訳ないって思ってないだろ。」


顔に書いてある


“手伝わせるつもりだった”って。


「お前にしか頼めないんだよ。許せ」


《2人とも手、止まってる》


樹里はスッとボードを俺達のところに置いた


「樹里、すまん」


樹里のヤツ多少、怒ってる


「樹里、休憩するか」


俺が聞くと素直に頷いた


樹里は疲れてる


まだまだ終わりそうにないし休憩しよう


「俺、昼飯買ってくるよ」


小牧は昼飯を買いに行ってしまった


「飲み物買ってくるけど、樹里はなに飲む?」



《オレンジジュース。あたし、此処に居るね》


「分かった。ゆっくり休んでろ」


俺は財布を持って自販機に向かった
生徒玄関前の自販機に着くとオレンジジュースとコーヒーを買う


にしても、夏だな。暑すぎる


~♪~♪~♪~


携帯が鳴った


相手は奏哉さんだ


***********
頼まれたもの出来たぞ。
喜んで貰えると良いな
会えるの楽しみにしてる
***********

頼んでたもの出来たのか。


間に合った、良かった


軽くメールを返信し携帯をポケットに突っ込んだ


「あっ、あの…」


後ろから声がして振り返る


そこには白いワンピースを着た女の子が立っていた


栗色の長い髪が風でなびく


顔立ちがはっきりしていて目は大きく背が高い


人形みたいだ


樹里を可愛い系と例えるなら目の前にいるこの子は綺麗系
「どうかしました?」


つい敬語になってしまう


同い年かもしくは先輩くらいだろう


「あたし、人を探してるんです」


「人?」


俺が聞き返すとその子は頷いた


「この学校の2年生に寺田樹里って子、居るらしいんですけど…。知りません…よね?」


……樹里を探してるのか?


「あっ、居なかったら良いんです。夏休みだから学校には居ないか。」


“会いたいな。どうしよう。住んでる家までは分からないしなぁ”と呟く女の子


もしかして、樹里が言ってた子ってこの子なのか?


……まさかな。


こんなこと、あるわけがない


でも、聞いてあげるのも大事だよな


樹里には“ちょっと遅れる”とメールをした


そうしないと不安になるから。
「あっ、ごめんなさい。何でもないです。失礼します」


女の子は此処から去ろうとした


「ちょっと待って」


俺は女の子を引き止めた


この子が探してるのが樹里とは限らない


特徴を聞いてみることも必要だ


「ちょっと話せる?」


「良いですけど…」


俺は女の子を連れてベンチのある中庭に向かった


会議室からは此処は死角になるから見えない


「ねぇ、もしかして樹里を知ってるんですか?」


女の子は聞いてきた


「……って、それより先に自己紹介をしなきゃですね」


荷物を置いてベンチに座った


「笠原高校2年、高千穂奈那です。宜しくお願いします」


「相馬大翔です。宜しくな」


軽く自己紹介をして沈黙になった
「君が探してる子ってどんな子?」


沈黙を破ったのは俺だった


「優しくて、笑顔が可愛くて、カメラが好きであたしが友達って言うには勿体ないくらい可愛い人なんです」


……樹里と同じ


「でも、その子話せなくて…。あたしには何も言わずに転校しちゃったんです」


高千穂はやっぱり樹里のことを言ってるんだ


「どうしても会いたくて探しに来たんですけど…。あたしには会ってくれないかもな。」


“もう諦めるしかないか”と落胆していた


「間違ってたらごめんね。君の探してる子ってこの子かな…?」


俺は樹里の写メを見せた


「あっ!!あたしが探してるのはこの子なんです。やっぱり知ってたんですね」


樹里の顔を見て安心した表情を見せた高千穂。
「アドレスも変更して連絡もつかないし担任に場所を聞いて探しに来たんです。元気そうで良かったぁ…」


「樹里は元気だよ。会うことも出来ると思うけど、どうする?」


「会ってくれるかな…」


高千穂は不安そうな顔をした


「俺も協力するよ。今、学校に居て担任の手伝いをしてるんだ」


「終わってからで良いから会いたい」


“何時になるか分かんない”と言ったら“それでも良いです。待ってるから”と言っていた


「高千穂。公園の日陰のところで待ってて」


「奈那で良いです。樹里にはあたしに会ったことは内緒にしておいて下さい」


“サプライズしたいから”と笑顔で言っていた


「同い年だから敬語じゃなくて良いよ」


“同い年”と聞いた奈那はびっくりしていたけど樹里の居場所が特定出来てホッとしていた
“樹里はちゃんと連れて行く”と約束して奈那と別れた


会議室に戻ると小牧と樹里は昼食をとっていた


「大翔、何処に行ってたんだよ」


多少、不機嫌な小牧をよそに樹里の隣に座る


《おかえり》


口パクで出迎えてくれる時は調子が良いな


「ただいま。遅くなった」


《教えてくれたから大丈夫だよ》


やっぱりメールしといて正解だったな


「大翔、冷めないうちに食べろ。大翔が食べ終わったら作業再開するぞ」


他愛のない話をしながら昼食を食べる


そして、作業を再開させた


樹里は首を傾げた後、小牧をポンポンと叩き名簿のある部分を指差した


“佐々木廉”


樹里は知ってるのか?


小牧は“あっ”と呟いた後、話し出した