「樹里ちゃん、ありがとうね。久志と頂くわ」
《七絵さんがあたしにくれた物に比べたらまだまだですけどね》
「ううん。お土産をくれただけでも充分よ。」
母さんが喜んでるということは嬉しかったんだな
「今日は七瀬の所に泊まるわね。」
「姉貴のとこ…?」
「近くだし、七瀬には言ってあるから」
母さんは準備を始めた
樹里は再び袋を取り出した
母さんにあげるみたいだ
でも、さっきと表情が違う
「樹里、もしかしてこれは七瀬にか…?」
俺の問い掛けに頷く樹里
姉貴にまで買ってきてくれてたんだな
「母さん、これ。樹里が姉貴に渡してって。」
「七瀬にまで?あの子、喜ぶわよ」
“また、明日来るわね”と行って去っていった
「樹里、風呂入ってこい」
俺は先に風呂に入るように促す
うるさい母さんも居なくなったしやっとゆっくり出来る
それに樹里が疲れた顔してるから。
樹里は風呂に入っていた
樹里が風呂に入ってる間、母さんが散らかしたのを片付ける
おおざっぱなのか几帳面なのか分からない時がある
----トントン
片付けていると肩を叩かれた
「樹里、上がったか」
自分が戻って来たことを叩いて教えてくれたようだ
《大翔も入ってきて良いよ》
「じゃあ、入って来る。戻って来るまでゆっくりしてな」
樹里を残して風呂に入る
でも、やっぱり長い時間は樹里を1人に出来ない
急いで部屋に戻るとベッドに寝転がってカメラをいじってる樹里の姿があった
旅行で撮った写真を見てるんだろう
「樹里」
《おかえり》
と声が出ない分、口パクで話してくれた
調子が良いと口を動かそうとしている
今までの樹里にはなかった行動だ
それを読み取るのも大事なことであり俺に出来ること
「樹里、体調は?」
樹里の隣に寝転がりながら聞く
《大丈夫!!落ち着いた》
「そっか。何かあったら早めに言えよ」
樹里は頷く
《写真、一緒にみよ》
「おう。見せて」
ベッドに寝転んだ状態で一緒に写真を見る
「この、花菜と奏哉さん。良く撮れてる」
2人の笑顔がそっくりだ
《花菜ちゃんと奏哉さん、楽しそうだったもん》
……だろうな。
写真1枚で“楽しい”って伝わってくる
「この写真もなんかいい感じ」
怯えながら動物を抱いた花菜とそれを愛おしそうに見つめる奏哉さん
樹里らしい目線から撮れてる気がする
《花菜ちゃんが居たからいろんな写真が撮れたんだよ》
花菜が笑ってるから周りもつられて笑ってるんだ
「直樹さんと花菜の写真もいい感じだな」
《花菜ちゃん、お父さんに懐いてたんだ。お父さんも嬉しそうだった》
樹音も居るしどう接して良いかは分かってるはずだから。
樹里が撮った写真を見ながらいろんな話が出来た
周りはいちいち樹里の書いた文字を読むのが面倒だと思うかもしれない
だけど、俺はそう思わない
樹里のことを知れる気がするから。
樹里は一度起き上がるとバッグから小さな袋を取り出した
そして、再び寝転がると俺にその袋を渡した
……顔を真っ赤にしながら。
「俺…、に?」
樹里は顔を真っ赤にしながら頷いた
ゆっくり開けてみるとブレスレットが入っていた
クロスがあしらわれたシンプルなデザイン
同じものが2つ
「もしかして、お揃い?」
樹里は頷いた後、顔を伏せた
……やべー、嬉しい
こんなに嬉しいのは初めてかもしれない
《嫌、だった?》
「嫌じゃねーよ。嬉しい。ありがとう」
寝転がった状態で樹里を抱きしめた
「俺が最初にお揃いのものプレゼントしようと思ったのに樹里に先越された」
《ごめん》
「謝んな。嬉しいのには変わりないから」
樹里は頷くと欠伸をしていた
そのまま俺の胸の中で眠っていた
----翌日
眩しい日差しに気づき目が覚める
隣を見ると気持ち良さそうに眠る樹里の姿
起こさないように起き上がる
気持ち良さそうに眠ってる樹里を起こすのはかわいそうだ
とりあえず、天気も良いし洗濯物を干してしまおう
樹里の分を合わせ2人分を手際よく干す
洗濯物を干し終えた時、背中が暖かくなった気がした
「樹里、起きたのか?」
俺が聞くと頷くだけで離れようとはしない
そんな樹里を抱き抱えてソファーに座る
「おはよ。もう少し寝てて良かったのに…」
《さびしい》
と口パクで話す樹里
「怖い夢でも見たか?」
樹里が離れようとしない時は怖い夢を見たりする時だ
いつもはすぐに離れるのに今日は離れない
《大翔が居なくなった夢を見たの》
テーブルの上に置いてあったボードを取りそう書いていた
だから、いつもより落ち込んだ顔をしてるんだな
「俺は樹里から離れないよ。だから、心配するな」
俺が樹里と一緒に居たいから。
「ご飯作るから樹里は顔洗っておいで。」
そう言うと樹里は名残惜しそうに俺から離れた
俺は急いで準備をする
母さんが煮物を作ってくれてるのにさっき気付いた
せっかくだから食べよう
昨日の残り物と煮物、ご飯と味噌汁を並べて樹里と一緒に食べる
樹里はまだ気分が乗らないみたいでムスッとしている
俺になにが出来るだろうか…?
どうしたら、樹里の役に立てるだろう
考えなきゃいけないな。
~♪~♪~♪~
樹里と2人でゆっくりしていると突如、携帯がなった
小牧からだ
何かあった時のことを考えて番号を教えてもらった
「もしもし」
「大翔、今ヒマ?」
「樹里と一緒に居ます」
小牧は俺らが付き合ってることを知ってるから言って良いよな
「樹里も一緒か。今から学校に来て。」
「今から??」
何をしようか考えてる途中だったけど。
「ちょっと手伝って欲しいんだ。」
雑用に使われるんだな。
「樹里、行動移すまでに時間掛かるよ?」
「それでも良い。急がないから」
それだけ告げると電話を切った
拒否権はなしってわけか。
樹里を見ると首を傾げていた
まぁ、気になるよな。
「樹里、今から学校に来いってさ。」
樹里は驚いた顔をした
……当たり前だよな。
「手伝って欲しいんだってさ。急がないらしいからゆっくり来いって」
それを聞いて安心した笑みを見せた
「着替えるから待ってろ。」
頷いた樹里を見てから脱衣所で制服に着替える
夏休みなのに学校なんて面倒くさいな。
リビングに戻ると樹里はソファーに座ってボーッとしていた
「樹里、どうした?」
《聞いて欲しいことがあるの》
と書いたボードを見せた
小牧は急がないって言ってたし聞いてあげよう
「ゆっくりで良いから書いて。」
樹里はペンを走らせていた
《旅行の時にね、奏哉さんから担任から預かったものがあってその中に手紙が入ってたんだ》
……手紙?