【更新中】キミの声、聞かせて

冬華の家を出て俺の家を目指す


今日は珍しく樹里から手を握ってきた


《ただいま》


口パクでそう言った


「改めてお帰り。後でゆっくり話聞かせてな」


直樹さんとの旅行がどんなものだったのか早く聞きたい


「あっ、母さん居るから」


母さんの存在、忘れてた


《七絵さん、居るの?》


「樹里が旅行に行ってる間、実家に帰ってたんだ。親父に送って貰ったら母さんがついて来た。明日までは居るってさ」


母さんが居るだけで賑やかなんだよな


「樹里ちゃん、お帰りー!!会いたかったわよー!!」


家に帰るとテンションの高い母さんが出迎えて樹里を抱きしめた


俺のことは無視ですか…


「さっ、来て来て。」


この状態なら我が家のようにくつろいでるな
リビングに行ってみると案の定、くつろいでる形跡がある


せっかく綺麗に片付けたのに…


「樹里、立ってないで座って良いよ。」


さっきから母さんに圧倒されっぱなしだから。


あれ…?樹里の様子が変だ


立ったまま動こうとしない


「樹里?」


呼んでみても返事がないのは当たり前なわけで…


俺は樹里を自分の方に向かせた


身体が熱いから熱があるな。


「樹里、具合悪いか?」


俺の問い掛けに首を横に振る


「正直に言え」


《ダルい》


……やっぱりな。


「えっ、具合悪いの?」


母さんは気付いてなかったらしい


「疲れが出たんだろうな」


俺は樹里をベッドに寝かせた


樹里は俺から離れようとしなかった
「樹里、どうした?」


《離れたくないや。ごめんなさい》


謝らなくて良いのに…


「疲れて具合悪いんだろ?」


《大翔の顔見たら安心しちゃって…》


「分かったから。無理に文字書かなくて良い。一時眠るんだ」


俺が頭を撫でていると樹里は眠っていた


「樹里ちゃん、大丈夫なの?」


母さんは心配そうだ


「久しぶりに長い時間外に出てるしそうは見えなくても直樹さんに気を遣ってたみたいだから疲れが溜まってるみたいだな」


少しの間だけでも寝かせてあげよう


「樹里ちゃんのこと、ちゃんと分かってあげようとしてるのね」


「当たり前。樹里の喜ぶことしてあげたいから。樹里には笑ってて欲しいんだ」


俺が頑張れる源は樹里の笑顔だから…。
君のために

出来ることをする

君が喜んで

くれるだけで

嬉しくなるんだ

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樹里は眠った


離れなかったため今の俺も樹里と一緒に寝転がった状態


相変わらず、寝顔可愛いな


笑顔もだけど樹里の寝顔も癒される


自然に俺の顔も綻ぶ


「なんか、新たな大翔が見れて貴重だわ」


母さんの存在、忘れてた


「良いじゃんか。ぶっちゃけ本気の恋なんて初めてなんだから」


自分でも此処までハマるなんて初めてでどうして良いか分からない


でも、一つだけ言えるのは…


“樹里の役に立ちたい”


ただ、それだけ。


「ご飯作るからキッチン借りるわね」


母さんは鼻歌を歌いながら料理を始めた
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樹里は1時間ほどで起きた


先ほどに比べたら顔色もマシだ


「樹里ちゃん、落ち着いた?」


母さんの問い掛けに頷く樹里


「座ってて良いからね」


俺と樹里はソファーに座った


《だいぶ良くなった》


と書いたボードを見せてくれた


「そっか。良かった」


俺は樹里の頭を撫でた


「旅行の話、聞かせて」


母さんが準備してる間に旅行の話を聞くことにした


《足湯に行ってかき氷食べたでしょ?展望台にも行ったの。写真もたくさん撮ったよ》


直樹さんも甘いもの好きみたいだしな


《展望台で休憩してたらね、奏哉さんと花菜ちゃんに会ったんだ》


奏哉さんと花菜に…?
《それでね、急きょ4人で動物園に行ったの。楽しかった♪》


4人で動物園に行ったことを思い出したのか樹里は笑顔だった


後は買い物したこと、直樹さんとプレゼント交換をしたこと、ケーキをくれたことなど…


2泊3日の旅行が充実してたことが樹里の顔を見て分かる


「ご飯出来たわよ」


母さんはキッチンからテーブルに運ぶ


唐揚げ、ポテトサラダ、肉じゃがなど…


母さん、樹里に食べさせたくて腕振るったな


樹里は手を合わせ食べ始めた


笑顔ってことは美味しいんだな


《おいしい》


と口パクで伝えていた


それを見た母さんは喜んでいた


「大翔の部屋に来たの、久しぶりね」


そういえば、最初の引っ越し以来だな
「大翔にしては片付けられてるわね」


俺だって片付けるさ


樹里が居るからな


《食器片付けるね》


「大丈夫なのか?」


まだ本調子じゃないはずなのに。


樹里は頷いて食器を片付け出した


「やっぱり樹里ちゃんは良い子ね」


母さんはよっぽど樹里を気に入ったようだ


《終わったよ》


「ありがとう。お疲れ様。座りな」


俺は樹里を座るように促す


樹里は座ると俺の手を握ってきた


テーブルで隠れてるから母さんには見えてない


可愛いとこあるじゃん


こんな小さなことでも嬉しいと思う


でも、嬉しいと思うのは相手が樹里だからだな。


今までこんな風に思うことなんてこれっぽっちもなかったから。
「樹里ちゃん、これ」


母さんは別の部屋から大量のプレゼントを持ってきた


《大翔、なにこれ。》


樹里はいきなりすぎてついていけないみたいだ


「母さんから樹里へのプレゼントだって」


樹里は申し訳ない顔をした


「樹里ちゃん、そんな顔をしないでもらって欲しいな」


《良いんですか?》


「もちろん!!樹里ちゃんだからもらって欲しいの」


「母さんもこう言ってるんだ。もらってあげてな」


母さんが樹里を気に入った証拠だから。


《七絵さん、ありがとうございます》


「可愛い娘の為だもの。良いのよ」


《大翔の部屋に置いてて良い?家にはたくさんあるから。》


「良いよ。泊まりに来た時の為に置いとけ」


また、いつ来ても良いように…
「母さんと姉貴も好みが似てるから樹里が喜びそうなものばっかりだな」


「樹里ちゃん、可愛いんだもん。女の子は可愛くしなきゃダメよ」


もう1人女の子が欲しいと言ってた母さん


母親の居ない樹里のことを自分の娘のように可愛がっている


「樹里、良かったな」


《うん。嬉しい》


樹里は笑っていた


《あっ、七絵さんにお土産があるんです》


「お土産…?」


樹里は自分の荷物から袋を取り母さんに渡す


「なに…?」


《お父さんと2人旅に行ってきたのでお土産です。相馬先生とのおやつにどうぞ》


ボードを見せた樹里はニコッと微笑んだ


母さんは驚いていた


まさか、自分にまでお土産があるなんて思ってなかったらしい