樹里の家の近くで2人の帰りを待つ
夏だからどの時間も暑い な
すると、1台の車の音がして顔を上げる
あの車は直樹さんのだ
直樹さんは俺の存在に気づいたが下を向いてる樹里は俺の存在に気づいていない
家の車庫に車を停めると直樹さんは樹里の肩を叩いた
そして、やっと俺の存在に気づきニコッと微笑んだ
元気そうだな
樹里は車から降りると一目散に俺の所に来て抱き付いて再び微笑んだ
あぁ、やっぱり可愛い
この笑顔、俺が一目惚れした笑顔だ
樹里は笑ってる方が良いな
樹里の笑顔に癒される
この笑顔、好きだ
「大翔くん、お迎えありがとう。娘を宜しく頼むよ」
「はい。分かりました。樹里、楽しめたみたいだな」
樹里は小さく頷いた
「俺も久しぶりで楽しめたよ。樹里、忘れ物ないようにして行くんだぞ」
《準備して来るから待ってて》
それだけ書いて俺に見せると樹里は荷物を持って中へと入って行った
「大翔くん、樹里の話聞いてあげてな。樹里は君に話したくて仕方ないみたいなんだ」
直樹さんが笑顔で言うって事は悪い話じゃないみたいだな
直樹さんと話をしていると樹里が出てきた
「準備出来たか?」
《うん。冬華の家に寄って良い?》
「もちろん。」
「じゃあ、気をつけるんだよ。2人、仲良くな」
直樹さんに見送られ冬華の家に行くと樹里は冬華にお土産を渡した
ちゃんとお土産買って来てたんだな
喜んだ冬華の顔を見た樹里は嬉しそうだった
冬華の家を出て俺の家を目指す
今日は珍しく樹里から手を握ってきた
《ただいま》
口パクでそう言った
「改めてお帰り。後でゆっくり話聞かせてな」
直樹さんとの旅行がどんなものだったのか早く聞きたい
「あっ、母さん居るから」
母さんの存在、忘れてた
《七絵さん、居るの?》
「樹里が旅行に行ってる間、実家に帰ってたんだ。親父に送って貰ったら母さんがついて来た。明日までは居るってさ」
母さんが居るだけで賑やかなんだよな
「樹里ちゃん、お帰りー!!会いたかったわよー!!」
家に帰るとテンションの高い母さんが出迎えて樹里を抱きしめた
俺のことは無視ですか…
「さっ、来て来て。」
この状態なら我が家のようにくつろいでるな
リビングに行ってみると案の定、くつろいでる形跡がある
せっかく綺麗に片付けたのに…
「樹里、立ってないで座って良いよ。」
さっきから母さんに圧倒されっぱなしだから。
あれ…?樹里の様子が変だ
立ったまま動こうとしない
「樹里?」
呼んでみても返事がないのは当たり前なわけで…
俺は樹里を自分の方に向かせた
身体が熱いから熱があるな。
「樹里、具合悪いか?」
俺の問い掛けに首を横に振る
「正直に言え」
《ダルい》
……やっぱりな。
「えっ、具合悪いの?」
母さんは気付いてなかったらしい
「疲れが出たんだろうな」
俺は樹里をベッドに寝かせた
樹里は俺から離れようとしなかった
「樹里、どうした?」
《離れたくないや。ごめんなさい》
謝らなくて良いのに…
「疲れて具合悪いんだろ?」
《大翔の顔見たら安心しちゃって…》
「分かったから。無理に文字書かなくて良い。一時眠るんだ」
俺が頭を撫でていると樹里は眠っていた
「樹里ちゃん、大丈夫なの?」
母さんは心配そうだ
「久しぶりに長い時間外に出てるしそうは見えなくても直樹さんに気を遣ってたみたいだから疲れが溜まってるみたいだな」
少しの間だけでも寝かせてあげよう
「樹里ちゃんのこと、ちゃんと分かってあげようとしてるのね」
「当たり前。樹里の喜ぶことしてあげたいから。樹里には笑ってて欲しいんだ」
俺が頑張れる源は樹里の笑顔だから…。
君のために
出来ることをする
君が喜んで
くれるだけで
嬉しくなるんだ
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樹里は眠った
離れなかったため今の俺も樹里と一緒に寝転がった状態
相変わらず、寝顔可愛いな
笑顔もだけど樹里の寝顔も癒される
自然に俺の顔も綻ぶ
「なんか、新たな大翔が見れて貴重だわ」
母さんの存在、忘れてた
「良いじゃんか。ぶっちゃけ本気の恋なんて初めてなんだから」
自分でも此処までハマるなんて初めてでどうして良いか分からない
でも、一つだけ言えるのは…
“樹里の役に立ちたい”
ただ、それだけ。
「ご飯作るからキッチン借りるわね」
母さんは鼻歌を歌いながら料理を始めた
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樹里は1時間ほどで起きた
先ほどに比べたら顔色もマシだ
「樹里ちゃん、落ち着いた?」
母さんの問い掛けに頷く樹里
「座ってて良いからね」
俺と樹里はソファーに座った
《だいぶ良くなった》
と書いたボードを見せてくれた
「そっか。良かった」
俺は樹里の頭を撫でた
「旅行の話、聞かせて」
母さんが準備してる間に旅行の話を聞くことにした
《足湯に行ってかき氷食べたでしょ?展望台にも行ったの。写真もたくさん撮ったよ》
直樹さんも甘いもの好きみたいだしな
《展望台で休憩してたらね、奏哉さんと花菜ちゃんに会ったんだ》
奏哉さんと花菜に…?
《それでね、急きょ4人で動物園に行ったの。楽しかった♪》
4人で動物園に行ったことを思い出したのか樹里は笑顔だった
後は買い物したこと、直樹さんとプレゼント交換をしたこと、ケーキをくれたことなど…
2泊3日の旅行が充実してたことが樹里の顔を見て分かる
「ご飯出来たわよ」
母さんはキッチンからテーブルに運ぶ
唐揚げ、ポテトサラダ、肉じゃがなど…
母さん、樹里に食べさせたくて腕振るったな
樹里は手を合わせ食べ始めた
笑顔ってことは美味しいんだな
《おいしい》
と口パクで伝えていた
それを見た母さんは喜んでいた
「大翔の部屋に来たの、久しぶりね」
そういえば、最初の引っ越し以来だな
「大翔にしては片付けられてるわね」
俺だって片付けるさ
樹里が居るからな
《食器片付けるね》
「大丈夫なのか?」
まだ本調子じゃないはずなのに。
樹里は頷いて食器を片付け出した
「やっぱり樹里ちゃんは良い子ね」
母さんはよっぽど樹里を気に入ったようだ
《終わったよ》
「ありがとう。お疲れ様。座りな」
俺は樹里を座るように促す
樹里は座ると俺の手を握ってきた
テーブルで隠れてるから母さんには見えてない
可愛いとこあるじゃん
こんな小さなことでも嬉しいと思う
でも、嬉しいと思うのは相手が樹里だからだな。
今までこんな風に思うことなんてこれっぽっちもなかったから。