「大翔くんだろ?」
お父さんには分かっちゃうね
「さっき、電話があったんだ。帰って自分の部屋に荷物置いてばあちゃん達に挨拶したら大翔くんの家に行っておいで」
《良いの?》
あたしはボードを見せた
「もちろん。せっかくの夏休みだ。たくさん思い出作って来い。体調も良いみたいだしな」
お父さんはちゃんと見てくれてるんだ
「家に居ることも大事だけど、外に出ることも大事だ」
引っ越して来て少しずつだけど外に出れてる
それは紛れもなく大翔のおかげなんだ
お父さんは文句一つ言わずに車を運転する
あたしも少しずつ前に進まなきゃね
《お父さん、旅行楽しかった。連れてきてくれてありがと》
「こっちこそありがとう」
お父さんとの距離が近くなったと感じる旅行だった
癒されるのは
君の笑顔
君が居ることで
楽しいと思えるし
自然と笑ってる
自分がいる
***************
樹里が旅行に行ってる間は何もする事がなく久しぶりに実家に帰っていた
樹里が帰って来る日にはちゃんと出迎えるから家に帰るけど…
「急に実家に帰って来るとかどういう風の吹き回し?」
母さんには何も言わずに実家に帰って来たから驚かれた
「樹里、居ないからたまには帰るのも良いかなって。」
「樹里ちゃん、居ないの?もしかしてフられたとか?」
「アホか!!フられるわけねーよ。親父さんと2泊3日で旅行」
母さんは俺の反応を楽しんでるように見えた
俺に彼女が出来たからって茶化さなくても良いのに…
「えっ?樹里ちゃん、旅行なの?」
「あぁ。樹里、直樹さんと2人で過ごした時間少ないから旅行に行くことを勧めたんだ」
普段、甘えられてないからこういう時くらいはな。
「あなたもやる時はやるじゃない。それも樹里ちゃんだからよね」
「そうたな」
樹里と出会えてなかったら此処まで素直になってない
「じゃあ、今日の夜は大翔の好きな物作ってあげる」
「ハンバーグな。散歩に行ってくる」
腹空かしのために動かねーと。
「気をつけるのよ」
何故か母さんに見送られ外に出た
久しぶりだなー。この町
最後に来たのは樹里とだっけ?
公園で樹里の作ってくれた弁当を食べたんだよな…。
つい最近のことなのに懐かしく感じる
行き当たりばったりで着いたのは公園
公園には珍しく誰一人居なかった
公園のブランコに座る
1人で来たのは久しぶりだ
樹里、楽しんでるかな?
ちゃんと直樹さんに甘えられてるだろうか。
1人でいても考えるのはやっぱり樹里のこと
それだけ樹里のことが好きなんだと実感させられた
「あれ、大翔?」
「亮介、久しぶりだな」
俺に話しかけて来たのは亮介だった
「樹里ちゃんと一緒じゃないの?」
「樹里は親父さんと旅行に行ったよ。今日は俺1人」
「お前が1人なんて珍しいな」
……確かにそうだ。
樹里が彼女になってからほとんど一緒に居たからな。
1人なんて本当に久しぶりだ
「樹里ちゃんを溺愛してるもんな」
……溺愛って。
まぁ、そうだけど。
「俺が好きなのは樹里だけだ」
樹里以外なんて考えられない
樹里が隣で笑ってればそれで良い
「断言するほど樹里ちゃんが好きなんだな」
俺は素直に頷く
それは紛れもない事実だから。
「そういえば、亮介こそ琴音と一緒じゃねーの?」
コイツ等こそほとんど一緒に居るのに…
「琴音は担任に呼ばれて学校だよ」
「悪いことでもしたか?」
……って琴音に限ってそんなことはないか。
「アイツ、あぁ見えて努力家だから分からない事があると先生に聞きに行くんだよ」
“俺に聞けば良いのに”と亮介はショボンとしていた。
「大翔、買い物行こうぜ。」
亮介から誘われた
たまにはコイツと遊ぶのも良いかな。
「分かった。行こう」
亮介と2人で向かったのは実家近くのショッピングモール
昔は此処で良く遊んでたな。
高校の近くのショッピングモールよりだいぶ大きい
「久しぶりだなー。此処」
「昔は良く遊んでたよな」
コイツも覚えてたんだな。
「洋服見よう」
亮介に引っ張られ店舗に入る
自分の洋服買うのも良いかな?
亮介と好みが似てるため選びやすい
結局、チェックシャツとジーパンにした
「大翔ってなにを着ても似合うよな。羨ましいよ」
「お前、制服の着方が雑な時あるよな」
“それ、言うなよー!!”と拗ねた亮介を久しぶりに見た
次は樹里達へのお土産
「亮介はどうする?」
「どうしようかなー?大翔はどうするの?」
樹里の好きなモノか…
使えるモノが良いかも。
ブラブラと樹里の好きそうなモノを探していると可愛いガラスのコップを見つけた
花柄のコップ
樹里が好きそうだ
俺の部屋に来た時に使えるように買っておこう
「なぁ、これなら2人とも喜びそうじゃない?」
亮介が見せてきたのはシフォンのワンピース
白と水色と黄色
ゆったりしていて涼しそう
「琴音は水色だな」
「じゃあ、樹里はピンクか」
白も可愛いけど汚れが目立つ
2人して支払いを済ませ店を出た
「財布買いたいんだ。付いてきて」
亮介の財布を買いに行くことになった
「なんで財布?」
「もうボロボロで…。バイトでお金入ったから思い切って買おうかと…」
「はっ?バイト?」
コイツ、バイトしてたっけ?
「最近、始めたんだ。コンビニで。」
「バイトか…」
俺、バイトしたいけどする必要がない
それに今は樹里の傍に居てあげることが大事。
「大翔はバイトしなくても良いもんな」
まぁ、親父が医者だからな
毎月仕送りがある。
普段、高校生が貰う金額じゃないけど…
まぁ、余った分は貯金
「樹里と付き合いだしてから仕送りの金額が増えた」
「それ、樹里ちゃんの為に使えっていう意味じゃない?」
……そうだと思う
樹里のこと気に入った両親達だからな。
「お前、樹里ちゃんのおかげで両親との会話、増えただろ?」
亮介の言葉に素直に頷く俺
まさにその通り。
樹里のおかげで親父や母さん、姉貴と会話する回数が増えた
「樹里ちゃんのおかげで笑うようにもなってるしな」
「樹里の笑顔って癒されるんだよ。」
樹里が笑ってくれるから俺もつられて笑う
樹里と出会って世界が変わったんだ
「大翔って笑うと可愛いよな」
「褒めてんの?貶してんの?」
“充分、褒めてるんだよ”と言われた
亮介はいくつか財布を見て回って目星をつけていた
「決まったか?」
「迷うなぁ~。でも、これかな」
迷った挙げ句、黒の皮素材の長財布にしていた
派手すぎずシンプルすぎず亮介らしい