大翔*side
恋なんて
しないと思った
ましてや
一目惚れなんて
絶対にないと思った。
だけど、初めて
出会った君に
一瞬で恋をした
樹里*side
久しぶりに
再会した親友
あたしが初めて
心を許した男の子
2人が居ればあたしが
あたしらしく居られる
弱い自分だって
見せられる気がした
初めて出会ったキミは
笑顔が可愛くて
一瞬にして
心を奪われた気がした
***************
「大翔ー!!おはよー!!」
1人で登校していると誰かに声を掛けられた
「勝真か…。おはよ」
「お前、相変わらず元気ねーな」
そう、ブツブツ言ってるのは佐伯勝真(サエキショウマ)
なんだかんだ言って俺が1番信頼している親友
そんな俺は相馬大翔(ソウマヒロト)
今日から高校2年生
新学期はダルい
「あっ、知ってた?転校生来るらしいよ」
「はっ?転校生?」
「うん。しかも女の子」
……なんだ、女か。
「大翔、興味ないのか?」
「お前が1番知ってるくせに」
女なんて信頼しても一緒だしな。
「女、嫌いなくせして人気なんだよな。お前って」
「良いヤツ演じてるしな」
……めんどいけど。
「だから、女は寄ってくるんだって。猫被ってるだけなのにな」
「俺を好きになったって良いことねーのに」
勝真は俺の性格を良く知っている
だから、コイツの前ではありのままの俺で居られるんだ
「そういえば、冬華は?」
「冬華なら誰か迎えに行ってるらしいよ」
春川冬華(ハルカワフユカ)
名前に春と冬、季節が2つ入ってる
本人は不満に思うらしいが…
コイツは俺らと行動している女
俺もコイツと居る分は苦にならない
勝真と一緒で俺の性格を知っている1人だから。
そんな冬華が別行動なんて珍しい
いつも、勝真と居るのに。
「あっ、俺手伝わなきゃいけなかった」
確か、準備担当だったっけ。
「じゃあ、大翔。後でな」
勝真は足早に去っていった
時間あるしその辺で潰すか。
俺は校内の中心にある大きな桜の木が見える高台のベンチに座った
此処は俺のお気に入りの場所
今年も綺麗に咲いてんな
すると桜の木の下にあるベンチに人影が見えた
その子はカメラを持って写真を撮っていた
撮っては確認している彼女
笑ったり首を捻ったり…
そんな彼女が可愛くて見入ってしまった
「あっ、いたいたぁー!!探したんだよ?」
あっ、冬華だ…。
冬華を見たその女の子は渋い顔をした後、笑顔になった
とりあえず、近くまで言ってみるか
気になった冬華の近くに向かった
近くに行ってみると2人は並んで座っていた
何かを書いているようだ
「冬華」
気になって気がついたら冬華の名前を呼んでいた
「あっ、大翔。居たんだ。」
冬華が俺の名前を呼んだら隣の子はホワイトボードに“その人、誰?”と書いていた
「樹里、あのね。この人は相馬大翔君。同じクラスになる子だよ」
へぇ~。この子、樹里って言うのか
すると、彼女はホワイトボードに何かを書いていた
《寺田樹里です。宜しくね》
ボードを持った彼女はニコッと笑った
「寺田樹里(テラダジュリ)ちゃん。あたしの親友。今日からこの学校に転校してきた子」
「勝真と一緒じゃないと思ったらこの子と居たんだな」
冬華は小さく頷いていた
「この子、話せないの。分かってあげてね」
……話せない?
「話せないからホワイトボードに書いて話すんだ」
寺田は何かを書いて再び向けた
《話してることは聞こえるよ》
「俺の話してること分かるの?」
《耳は正常だからね。声が出ないだけ》
と書いて微笑んだ
「転校して来たばかりだからあたしがお世話するんだ」
《冬華、宜しくね?》
「もちろん!!直樹さんからも頼まれたし、樹里はあたしの親友でしょ?」
冬華の言葉に寺田は笑っていた
冬華を見ていて分かる
寺田は冬華にとって必要なんだな。
「教室行くか。」
「あっ、うん。大翔、職員室について来て」
俺は冬華に渡された荷物を持ち職員室へ向かった
----トントン
「失礼します。小牧先生居ますか?」
「おっ、冬華。こっちだぞ」
小牧は奥から手招きをした
小牧竜平(コマキリュウヘイ)
また、コイツが俺らの担任か。
「樹里、連れて来ました」
「寺田、待ってたぞ」
小牧が言うと寺田はしゃがみ込んだ
「あっ、先生。樹里は名字で呼ばれると不安になるから名前で呼んであげて下さい」
「あっ、済まない。“樹里”で良いんだな」
小牧の言葉に頷いていた
《先生が担任ですか?》
ホワイトボードを取り出し何かを書いたと思ったらそう書いていた
「あぁ。担任の小牧竜平だ。樹里のことは校長先生から聞いてるから心配ないぞ」
《宜しくお願いします》
と書き寺田は安心した表情を見せた
そういえば、冬華の親父って若くして校長先生だったな
祖父が理事長だったっけ?
「みんな始業式で体育館に行ってるんだ。もう少しで終わるし俺らも行こう」
----トントン
叩かれたと思ったら寺田が何かを書いていた
《荷物、ありがとう。ごめんね》
……そういうことか
「謝らなくて良いよ。教室まで持ってやる」
「うわっ。大翔が優しい。しかも、素の優しさだ。いつもだったら作ってるのに…」
冬華はいつも一言多いんだよな。
「でも、悪いヤツじゃないから何かあったら頼ると良いよ」
「そうだ。冬華じゃカバー出来ないところもあるだろうしお前も手伝ってやれよ」
俺は小さく頷いた
寺田は冬華と一緒
周りの女達とは違う気がした
「樹里の荷物、持って行くからね。先生とおいで」
寺田が小さく頷いたのを見て俺らは教室に戻る
「2人とも何処行ってたんだよ。探したぞ」
あっ、勝真の存在忘れてた
冬華も俺と同じ顔をしていた
「はいはーい。席につけよ」
小牧が元気良く入って来た
「転校生を紹介する。入ってこい」
“転校生”と言った途端、静まり返った
緊張した面持ちで寺田が入ってきた
「うわっ。可愛い」
「お友達になれるかな?」
「彼女にしたい」
なんていう男女の会話が聞こえる
「自己紹介してな」
すると寺田はホワイトボードをこちらに向けた
《寺田樹里です。訳あって話せませんが宜しくお願いします》
と丁寧な文字で書いてあった