「ご飯食べてからゆっくり回りましょ」
チケットを買ってから近くにある売店でお昼ご飯を買いベンチに座って食べる
おにぎりを頬張る花菜ちゃんを見ると樹音を見てるみたい。
「おねーちゃん、おいしいねっ。」
笑顔で話してくる花菜ちゃんに笑顔で頷く
「花菜も樹里ちゃんのこと気に入ってるみたいだな」
「樹里のこと、気に入ってくれてるなら嬉しいよ。」
お父さんは花菜ちゃんの頭を撫でる
「だって、おねーちゃん、やさしいもん。かなのおねーちゃんだもん」
花菜ちゃんにストレートに言われると恥ずかしいけど、嬉しい
「さっ、食べ終わったし回ろうな」
「樹里、写真撮るんだよな?」
《もちろん。花菜ちゃんとも写真撮ってね》
せっかくだから思い出に残したい
「花菜、ロバが居るぞ」
入口付近に居るロバが出迎えた
「おーきいね」
小さな花菜ちゃんにしてみれば大きいよね
それからは写真を撮りながら見て回った
大翔と来た動物園とはまた雰囲気が違うから新鮮だ
「樹里、写真撮れてるか?」
お父さんの問い掛けに笑顔で頷いた
花菜ちゃんと奏哉さんの仲良いと感じ取れる写真も撮れてる
「樹里ちゃんと直樹さんの写真も撮ってるからな」
奏哉さんがカメラを見せながら話してくれる
《ありがとうございます》
「おじちゃん、おんぶ」
花菜ちゃんもお父さんに懐いたみたい
「おいで」
「花菜、歩けよ。せっかく動物も近くに居るんだからな」
頷く花菜ちゃんを横目にあたしも写真を撮る
「奏哉くん、気にしないで。樹里にももう1人花菜ちゃんと同い年の妹が居るから苦には思わないよ」
そう言って花菜ちゃんに微笑みかけるお父さん
あたしにもこんな時期があったのかな?
お父さんと2人で過ごした時間が少ないから分かんないや。
何も考えないで済むように写真を撮る
「樹里ちゃん」
奏哉さんの声がして振り向く
「何か悩んでる?」
何を言われるかと思ったら…
「ごめんな。親父さんとの2人旅、邪魔したね」
不安そうな奏哉さんに心配掛けないように微笑みかける
「花歩もね、父親に育てられてるからどう接して良いか悩んでたんだ」
……花歩さんが?
「樹里ちゃんは樹里ちゃんらしく居れば良い。直樹さんだって樹里ちゃんと仲良くしたいはずだから」
それを聞いて気持ちが楽になった
「樹里、アライグマが居るぞ」
お父さんが花菜ちゃんを肩車したまま教えてくれる
「さっ、行こう。楽しまないともったいないよ」
奏哉さんに言われ笑顔で頷いたあとお父さんと花菜ちゃんに駆け寄った
「樹里、なんかすっきりした顔、してるな」
紛れもなく奏哉さんのおかげ
「おじちゃん、あるく」
花菜ちゃんはお父さんから降りるとあたしに近寄ってきた
「おねーちゃん、しゃしんとろ?パパ、おねがい」
奏哉さんは快く花菜ちゃんのお願いを受けていた
「花菜、ライオンが居るぞ」
「いや!!ライオン、こわい」
花菜ちゃんはあたしの足にしがみついていた
「ライオンとトラ、苦手なんだよな」
小さい花菜ちゃんには怖いよね…
「ライオンとトラって言っても此処に居るのは赤ちゃんなんだけど」
触れ合えるみたいだ
《かなちゃん、だいじょうぶ。こわくないよ》
あたしはボードに書いてそれをみせる
「こわくない?」
あたしは頷くとライオンの赤ちゃんを抱き上げ花菜ちゃんに見せる
「何もしないよ。樹里と写真撮ってあげるから抱いてみる?」
お父さんの言葉に安心したのかあたしからライオンの赤ちゃんを取り抱いていた
「こわい…けど、かわいい」
最初は怯えていたものの慣れると笑顔が増えていた
それからはお土産を買ったりして閉園時間、ギリギリまで楽しんだ
「直樹さん、今日はありがとうございました。2人旅、楽しんでくださいね。」
花菜ちゃんを助手席に乗せながら奏哉さんは話していた
「いやいや、こっちこそありがとう。樹里と2人ならどうして良いか分からなかったから助かったよ」
「邪魔してすみません」
「楽しかったよな、樹里?」
《もちろん。花菜ちゃんと奏哉さんのおかげでたくさん写真が撮れました。》
お父さんと2人ならありきたりな写真ばっかりだっただろうから。
「あっ、樹里ちゃんに預かり物があるんだよ。」
奏哉さんは後部座席から紙袋を取り出した
「いつ渡せるか分からなかったけど、渡せて良かった。佐々木先生からの預かり物だよ」
……佐々木先生から?
「理由は手紙書いてるから分かるってしか教えてくれなかった」
《分かりました。ありがとうございます。花歩さんにも宜しく伝えといて下さいね》
また会う約束をして奏哉さんと別れた
最初は接し方に
戸惑ったけど
お父さんのことを
知れる度に
嬉しくなった
あたしのことも
知って欲しい
***************
奏哉さん達と別れ旅館へ向かう
「ゆっくり出来る場所、予約しておいたから」
と言って着いたのは高台の旅館
駐車場から見る景色も素敵だ
すかさずカメラを出し写真を撮る
「樹里、行くよ」
お父さんはチェックインをしていたみたい
急いでお父さんについて行く
「此処みたいだな」
お父さんは鍵を開けて中に入っていた
あたしもゆっくり中に入る
中はホテルみたいに豪華なものだった
今日から此処に泊まるんだ
「気に入ったか?今日から此処を拠点に行動するからな」
お父さんは荷物を置くと椅子に座って休憩していた
「樹里も座りな。疲れただろ?」
お父さんが座っている椅子とは別のソファーに座る
楽しかったけど疲れたなぁ…。
でも、まさかあんな所で奏哉さんと花菜ちゃんに会うなんて思わなかった
いつかは会いたいって思ってたから会えて嬉しかったし元気そうで良かった
「樹里、今日は楽しかったか?」
お父さんは不安そうな顔をしながらあたしの隣に座った
《楽しかったよ?連れて来てくれてありがとう》
お父さんと2人で過ごすなんて本当に久しぶりのことで最初は戸惑ったけど花菜ちゃん達のおかげで少しずつ慣れて来た
「奏哉くん、優しい人だな。」
《佐々木先生が担任だったみたいで奏哉さんの両親と知り合いなんだって》
世間って狭いよね。
「佐々木先生を知ってるのか。世間は狭いな」
お父さんも同じこと思ってた
「いつか、佐々木先生に今の生活のこと報告するんだぞ。」
会えたら報告するつもり。
「お風呂、入ってきな。そしたらゆっくり出来るだろ?」
……そうだね。
ゆっくり浸かって疲れでも取ろうかな。
「まだまだ時間はあるしゆっくり話でもしよう。」
あたしは頷いてからお風呂に向かった
此処、広いから迷子になりそう
お風呂好きだから良いけどね
ゆっくりと湯船に浸かって疲れを取る
声が出るようになったら冬華とも来たいなー。
大翔とも旅行に行きたい
やりたいことはたくさんある
だけど、今はお父さんとの時間を楽しむのが第一だ