【更新中】キミの声、聞かせて

「晴人さんに美味しいもの作ってもらおうな」


何を作ってくれるんだろ?


メニュー表は見たけど楽しみだなぁ…


「さっ、帰ろう」


大翔と手を繋ぎ晴人さんが居る喫茶店に戻る


「あっ、お帰り。散歩楽しかったか?」


晴人さんが帰って来たあたし達に気付き出迎えてくれた


「2人には特製ランチ作るから待っててね」


それだけ告げると準備に取りかかっていた


「樹里、こっち」


大翔はさっきとは別のテーブルに案内してくれた


今度は個室


海が綺麗に見える


「今日は晴れてるから海も綺麗だな」


《いつも此処に来てるの?》


「ん?久しぶりだよ。樹里に出会う前は学校が嫌で良く此処に来てた」


何事もなくサラッと言いのけた
「今は樹里との時間が楽しい。此処に樹里を連れて来れて良かった」


大翔はニコッと微笑んだ


「樹里と付き合い出してから世界が変わったみたいで視野が明るくなった。俺と付き合ってくれてありがとう」


面と向かって言われると恥ずかしいけど、嬉しい


あたしも話せない代わりに笑顔で頷いた

「おまちどおさま。ゆっくりして行ってな」


お皿に乗ってたのはオムライスやナポリタン、サラダ


「後でデザートも持ってくるからね」


あまりにも綺麗に盛り付けられてるのですかさず写真を撮った


撮った写真を晴人さんに見せてみる


「おっ、樹里ちゃん写真撮るの上手いな」


「樹里の趣味は写真を撮ることですからね。撮らせるととことん撮ってます」


だって、楽しいんだもん
カメラがないと楽しみがない


あたしにはカメラが相棒だから


「今度、ゆっくり樹里ちゃんの撮った写真見せてね」


それだけ告げると晴人さんは一旦、厨房へと戻った


「美味しいな」


大翔の問い掛けに笑顔で頷くあたし


何処にでもあるシンプルなものだけど、何処か懐かしい味がした


どれも美味しくて完食


デザートを持ってきた晴人は完食してるあたし達を見て喜んでいた


「アイス持ってきたよ」


チョコとバニラの2色アイス


端っこに生クリームものっていた


「あっ、大翔。今日のお代はいらないから」


「……えっ?」


「こんな可愛い子連れてきてくれたしな。今日はサービス」


“また、遊びに来てくれよ”と笑顔で言ってくれた晴人さんにあたしも笑顔で返した
その後、大翔と2人でのんびりな時間を過ごした


たまにはこんなのも良いかも知れない


樹音も甘いもの好きだから今度、連れてこよ。


「公園にでも行こう」


再び歩き出し公園に向かう


そして、ブランコに乗る


声が出なくなってからは良く公園のブランコに乗ってたな…


あの頃が懐かしいや


「樹里、飲み物買ってくるけど何が良い?」


あたしは携帯に“お茶”と打つ


「お茶な。ちゃんと戻って来るから此処にいろ」


あたしは小さく頷いた


ブランコに乗りながらボーッとする


「寺田さん、みっけ」


誰かの声がして一度ブランコを止める


するとそこには同じ学校の女子


名前は分からない


だけど、物凄く嫌な予感がする
「あなた、大翔と付き合ってるんでしょ?」


やっぱり大翔絡みか…


「なにか言いなさいよ!!」


「無理だって。コイツ話せないから」


「そういえば、そうだったね」


彼女たちは好き放題に言いまくる


「大翔と別れて?じゃないとあなた、痛い目に遭うから」


嫌だ!!別れたくなんかない


大翔に出会って楽しい


そんな楽しい時間を無駄にはしたくない


「まぁ、話せないし良いよね」


女子達はあたしを叩いたり蹴ったりした


痛い、苦しい…


刃向かうことが出来ないからされるがまま


「今日はこの辺にしといてあげる」


それだけ告げると女子達は去っていった


動くのは嫌だったけど、大翔にバレないように家に帰った
「樹里、お帰り。大翔くんと一緒じゃなかったのかい?」


お父さん、居たんだ


《具合悪くて帰って来た。しばらく1人にさせて》


それだけ書いて見せると部屋に行きベッドに寝転がった


蹴られたとこ、痛い…


声に出して泣きたい


だけど、それが出来ない


~♪~♪~♪~


誰だろ?


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樹里、どこ?
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大翔からのメール


さっきのことがフラッシュバックしてメールを返す気にはならなかった


大翔と釣り合わないことくらい自分が1番分かってる


だけど、大翔はありのままのあたしを受け入れてくれた人


これから先、こんな人には出会わないと思うから大翔を失いたくはない


いろいろと考えながら眠りに就いた
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どれくらい眠ったんだろうか?


身体が怠くて起き上がりたくない


ゆっくり顔だけを動かしてみる


そして、1人の人物が目に入る


なんで此処に居るの?


今、1番会いたくないのに…


「樹里、起きた?」


あたしは顔を見たくなくて布団を深めに被った


「飲み物買って行ったら樹里が居なくて探しまくった。晴人さんのとこにも居ないし焦ったんだからな」


大翔は更に続けた


「探してたら女子のグループとすれ違って樹里の話をしてたんだ。だから、問い詰めたら素直に認めたよ」


……ということは全てを知ってるの?


あたしは不安になりながらもゆっくり布団から顔を出した
「大丈夫。全部知ってるから。」


大翔は優しい声であたしの頭を撫でる


「樹里、血だらけだ。消毒しような」


掠れてたんだね…


知らずに寝たから布団、汚れた。


おばあちゃんに言わなきゃ


「樹里、居るかい?」


……おばあちゃんだ


「居ますよ」


話せない代わりに大翔が返事をしてくれた


「体調は大丈夫?」


あたしは小さく頷きペンを走らせた


《怪我してるのに気付かなくて寝ちゃったから布団が汚れちゃった》


「替えはあるから大丈夫だよ。やっておくから消毒しておいで」


大翔に連れられリビングへ行く


「直樹さん、救急箱貸してもらえますか?」


「良いよ。これね」


大翔はお父さんから救急箱を受け取っていた
「沁みるかもだけど我慢な」


大翔は手際よく消毒をしていく


消毒液が沁みて顔が歪む


「はい。終わり。良く我慢したな」


《ありがとう。消毒上手いね》


「親父から習ったんだ。“なにかあった時に役立つから”って。役に立ったな」


「大翔くん、ありがとう。今日は良かったら泊まっていって。」


「はい。分かりました。荷物取りに行って来ますね」


ひょんなことから大翔が泊まることになった


嬉しいような恥ずかしいような…


「荷物取りに行くけど、樹里はどうする?」


行きたいけど…怖い


「直樹さん、樹里のこと連れていきますね」


「あぁ、頼むよ。大翔くんが居ると樹音も喜ぶ」


お父さんは仕事があるらしく書斎へこもってしまった