「暑いな」
今日は快晴
良いお出掛け日和だけど暑すぎる
樹里はカメラを持つと楽しそうな顔になる
改めて思う。“本当に写真を撮るのが好きなんだな”と…
なんでも写真に収めてしまう樹里は凄い
歩き回っていると川辺にたどり着いた
休憩するため座る
樹里を隣に座るよう促した
すると樹里はボードを取り出し何かを書き出した
書き終えるとゆっくり俺に渡す
《小さい頃にね、お母さんに川に落とされたことがあるの》
……えっ?
《まだ樹音が産まれる前の話ね?あたしも普通に話せてた》
「何も知らずに連れてきたけど怖くないか?」
《1人だと怖いけど、大翔と一緒なら大丈夫だよ》
そう言ってくれると嬉しい
《あたしも克服していかなきゃ》
「無理する必要はない。樹里は樹里のペースでな」
俺の言葉に小さく頷く樹里
「時間はたくさんあるし、ゆっくり乗り越えれば良い。俺は樹里の傍に居る」
ゆっくりと樹里を抱き寄せた
「俺は何があっても樹里から離れないから大丈夫。だから、樹里のこともっと知りたい」
樹里から離れたくない
《大翔が居なかったら怖くて川に来ることもなかったよ。ありがとう》
大きな瞳に涙を溜めながら微笑んだ
「俺はいつでも樹里の味方だから」
俺以外にも樹里を支えてくれる人はたくさん居るはず
だから、ゆっくり乗り越えれば良い
時間が解決してくれるだろう
そして何より俺が樹里から離れたくない
樹里との時間を大切にしたいと改めて思えた
大翔*side
君との時間を
大切にしたい
改めてそう思った
君となら
どんな困難も
乗り越えていける
樹里*side
君のおかげで
前に進める
辛くても悲しくても
君が居るから
“1人じゃない”って
思うことが出来る
君が居るから
苦手なことも
克服したいと思える
君が居るから
前に進める
君が居るから
一歩ずつ進もうと思える
***************
大翔と一緒にお散歩に来た
着いた場所は河川敷
小さい頃にお母さんに川に落とされたことがきっかけで近づくことすら出来なかった
そのことを大翔に話すと申し訳ない顔をした
怖いけど、大翔と一緒なら大丈夫。
あたしも苦手なことを少しずつ克服していかなきゃ。
1人だと近づくことすらしなかった河川敷に大翔と一緒だから近づけた
筆談を使って大翔と会話をし川を眺めながら写真を撮っていた
「樹里、怖いのに良く頑張ったな」
優しい落ち着く声で言ってくれて…
頭を撫でてくれる
大翔に頭を撫でてもらうと落ち着くんだ
-----ギュルルルル
「樹里、腹減ったか?」
お腹が鳴ってしまって恥ずかしいけど嘘はつけないので素直に頷く
「晴人さんに美味しいもの作ってもらおうな」
何を作ってくれるんだろ?
メニュー表は見たけど楽しみだなぁ…
「さっ、帰ろう」
大翔と手を繋ぎ晴人さんが居る喫茶店に戻る
「あっ、お帰り。散歩楽しかったか?」
晴人さんが帰って来たあたし達に気付き出迎えてくれた
「2人には特製ランチ作るから待っててね」
それだけ告げると準備に取りかかっていた
「樹里、こっち」
大翔はさっきとは別のテーブルに案内してくれた
今度は個室
海が綺麗に見える
「今日は晴れてるから海も綺麗だな」
《いつも此処に来てるの?》
「ん?久しぶりだよ。樹里に出会う前は学校が嫌で良く此処に来てた」
何事もなくサラッと言いのけた
「今は樹里との時間が楽しい。此処に樹里を連れて来れて良かった」
大翔はニコッと微笑んだ
「樹里と付き合い出してから世界が変わったみたいで視野が明るくなった。俺と付き合ってくれてありがとう」
面と向かって言われると恥ずかしいけど、嬉しい
あたしも話せない代わりに笑顔で頷いた
「おまちどおさま。ゆっくりして行ってな」
お皿に乗ってたのはオムライスやナポリタン、サラダ
「後でデザートも持ってくるからね」
あまりにも綺麗に盛り付けられてるのですかさず写真を撮った
撮った写真を晴人さんに見せてみる
「おっ、樹里ちゃん写真撮るの上手いな」
「樹里の趣味は写真を撮ることですからね。撮らせるととことん撮ってます」
だって、楽しいんだもん
カメラがないと楽しみがない
あたしにはカメラが相棒だから
「今度、ゆっくり樹里ちゃんの撮った写真見せてね」
それだけ告げると晴人さんは一旦、厨房へと戻った
「美味しいな」
大翔の問い掛けに笑顔で頷くあたし
何処にでもあるシンプルなものだけど、何処か懐かしい味がした
どれも美味しくて完食
デザートを持ってきた晴人は完食してるあたし達を見て喜んでいた
「アイス持ってきたよ」
チョコとバニラの2色アイス
端っこに生クリームものっていた
「あっ、大翔。今日のお代はいらないから」
「……えっ?」
「こんな可愛い子連れてきてくれたしな。今日はサービス」
“また、遊びに来てくれよ”と笑顔で言ってくれた晴人さんにあたしも笑顔で返した
その後、大翔と2人でのんびりな時間を過ごした
たまにはこんなのも良いかも知れない
樹音も甘いもの好きだから今度、連れてこよ。
「公園にでも行こう」
再び歩き出し公園に向かう
そして、ブランコに乗る
声が出なくなってからは良く公園のブランコに乗ってたな…
あの頃が懐かしいや
「樹里、飲み物買ってくるけど何が良い?」
あたしは携帯に“お茶”と打つ
「お茶な。ちゃんと戻って来るから此処にいろ」
あたしは小さく頷いた
ブランコに乗りながらボーッとする
「寺田さん、みっけ」
誰かの声がして一度ブランコを止める
するとそこには同じ学校の女子
名前は分からない
だけど、物凄く嫌な予感がする
「あなた、大翔と付き合ってるんでしょ?」
やっぱり大翔絡みか…
「なにか言いなさいよ!!」
「無理だって。コイツ話せないから」
「そういえば、そうだったね」
彼女たちは好き放題に言いまくる
「大翔と別れて?じゃないとあなた、痛い目に遭うから」
嫌だ!!別れたくなんかない
大翔に出会って楽しい
そんな楽しい時間を無駄にはしたくない
「まぁ、話せないし良いよね」
女子達はあたしを叩いたり蹴ったりした
痛い、苦しい…
刃向かうことが出来ないからされるがまま
「今日はこの辺にしといてあげる」
それだけ告げると女子達は去っていった
動くのは嫌だったけど、大翔にバレないように家に帰った