【更新中】キミの声、聞かせて

「樹里に対しては本気だよ。ただ、好きになった人が話せなかったってだけ。」


樹里のこと、知れば知るほど好きになる


周りには不便に思うかもしれないけど、俺はそうは思わない


「大翔、変わったのね。樹里ちゃんのこと、大事にしなさいよ」


俺は力強く頷いた


「ただいま。」


親父が帰って来たみたいだ


「お帰りなさい。大翔と樹里ちゃん、来てるわよ」


「そっか。大翔、樹里ちゃん借りるからな」


しばらくは1人ってことか


「おっ、樹里ちゃん。お風呂入ってたのか」


親父に気付いた樹里は会釈していた


「荷物、運んで置くから親父と話して来い」


小さく頷いた樹里を見て親父は“じゃあ、行こう”と声を掛けた


再び、リビングは静かになった
「そういえば動物園、楽しかった?」


「あぁ、写真もいっぱい撮ってきた」


動物園なんて行ったの久しぶりだったから楽しめた


「樹里の作った弁当も食った」


「樹里ちゃん、お弁当作ってくれたの?」


「あぁ、姉貴も手伝ったみたいだけど美味かった」


また、作ってもらおう


「七瀬も嬉しそうに話したのよ。樹里ちゃんのこと」


……だろうな


樹里は姉貴が好きそうなタイプだし


弟の俺より樹里に対しての方が優しい


「樹里といると、新しい発見ばかりで新鮮なんだ。」


「樹里ちゃんの話をするあんたはとても楽しそうね。安心したわ。さっきも言ったけど、樹里ちゃんのこと大事にしなさいよ」


俺は頷くと風呂に入り樹里が来るまで自分の部屋で過ごした
君の隣に居ると

凄く安心する

君のおかげで

楽しいと

思えることが

増えた気がした


***************


大翔と一緒にデート


七瀬さんに手伝ってもらって頑張ってお弁当も作った


自信はなかったけど、喜んで食べてくれた大翔をみて嬉しくなる


動物園も久しぶり


最後に行ったのはいつだっけ…?そんな状態。


楽しかった。


いろんな動物も見れて写真も撮れて…


たくさんの動物と触れ合うことで気分転換になった


文句も言わず連れて来てくれた大翔には感謝だ


たくさん写真も撮れたし、2人での写真も道行く人に撮ってもらった


せっかくだから、可愛いアルバム作りたいな。


2人で初めての遠出だしね。
今は相馬先生に話を聞いてもらっている


話を聞いてもらうだけでも気分が落ち着くんだ


「大翔とのデートはどうだった?」


《楽しかったですよ。たくさん写真も撮れたし大翔に出会うまで出掛ける機会も少なかったので。》


話せなくなってから1人で出歩くのが憂鬱で仕方ないんだ


「樹里ちゃんと大翔の撮った写真、見たいな」


《アルバム作ろうって大翔が提案してくれたので出来上がったらお見せします》


それから、あたしの気分が落ち着くまで相馬先生は話を聞いてくれた


あたしはこんな空間を求めていたのかもしれない


「今日はとりあえず此処までね。また、ゆっくり聞いてあげるからノートは書いておいてね」


あたしが頷くと相馬先生は大翔の部屋まで案内してくれた
-----トントン


「大翔、入るぞ」


あたしが話せない代わりに相馬先生が話してくれた


「はい。あっ、樹里。終わったのか?」


あたしは小さく頷いた


「樹里ちゃん、ゆっくり休んで明日に備えるんだよ」


相馬先生はそれだけ告げると出て行った


「樹里、おいで?」


大翔に呼ばれ近寄り隣に座る


そして、抱き寄せてくれた


大翔が抱き寄せてくれると落ち着くんだよね


「親父と話せたか?」


《うん。少しは楽になった》


「良かったな。明日は亮介達と会うから体力温存しとけよ」


琴音達に会うの久しぶりだなぁ


「たくさん写真撮ったな」


《そうだね。たくさん写真撮ったからバッテリー充電しなきゃ》


明日、バッテリー切れたら大変だから。
「此処、使いな」


あたしのカメラの充電器とバッテリーを持って近くのコンセントにさしてくれた


大翔は優しいな


あたしの彼氏だなんて勿体ない


「樹里、どうした?」


大翔に心配掛けたくなくて首を振った


「なんかあったら言えよな?」


あたしは小さく頷いた


《大翔、今日は連れて行ってくれてありがとう》


再び、座り直しノートに書いた


「どういたしまして。楽しかったな。明日は水族館だぞ」


そう、明日は水族館


琴音が一緒にデートしようって大翔に提案して遊ぶことになった


「アルバム作るの大変だな」


《良いの。時間潰しになるから》


話せないと出来ることが少ない


だから、アルバム作るのが楽しみなんだ
「樹里がアルバム作るの楽しいならそれで良いけど手伝えることあったら言ってな」


《うん。ありがとう》


そう言ってもらえると嬉しい


「大翔ー。樹里ちゃん、ご飯出来たよ」


そう叫ぶ七絵さんの声がした


「飯だってさ。行くか」


なんだか不安になって大翔の服の裾を掴んだ


「大丈夫。不安にならなくて良い。甘えるのは後からな」


大翔には分かるんだね


大翔はあたしの頭を撫でると歩を進めた


あたしは置いていかれないように必死についていく


「樹里ちゃんは此処ね」


と七絵さんの前に座るよう促された


前には豪華な和食が並んでいた


……美味しそう


「樹里ちゃん、遠慮なく食べるんだよ」


相馬先生はお茶を啜りながら言ってくれた
あたしは手を合わせてから食べ始める


……うん、美味しい


話せない代わりに頷いて美味しいことを知らせる


「樹里ちゃんが笑顔で頷いてくれたなら喜んでくれたのね」


七絵さんは嬉しそう


大翔も久しぶりの家族団らんで楽しそうだ


いつもは1人だもんね


たまには家族で居たいんじゃないかな?


あたしは話せないから聞いてるだけだったけど、大翔の家族は温かかった


《食器、あたしが洗います》


「いいの。樹里ちゃんはお客様なんだからゆっくり休んでなさい」


“此処は大翔に洗わせるから”とあたしの分の食器も片付けてくれた


「大翔、樹里ちゃん借りるわね」


「すぐに返せよ。母さん、話し出すと長いから」


七絵さんに言われた大翔は不機嫌そうだ
「貴方はすぐに会えるから良いじゃない。あたしなんてたまにしか会えないんだから。」


「大翔、七絵にも話す時間くらいやれよ。」


「分かったよ…。俺は自分の部屋に居るからな」


大翔が折れた。相馬先生、さすがだね


「片付けは大翔に任せて行こうか。樹里ちゃん」


七絵さんに手を引かれリビングを出た


「ごめんね。あの息子の相手するの大変でしょ?」


あたしは横に首を振る


「さっ、ソファーに座って」


連れて来られたのは綺麗に整理された部屋


「此処は樹里ちゃんの部屋にしていいからね」


……えっ?


あたしはまばたきを繰り返した


「旦那がね、診察の後1人で居たい時もあるだろうからって用意したのよ」


至れり尽くせりで申し訳ないな。